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「どうしたの賢治?何かいる?」
「い、いや?いるというより、ないというか……え?まじ?見ちゃった……」
「どうしたのケンちゃん?急にしどろもどろになって……」
「いや……部屋が薄暗くて気付かなかったけど、目が慣れたせいだな。とりあえずその格好をどうにかしてくれない……?」
「「ん?あっ!?」」
賢治は明後日の方向を見ながら、望桃を指さし何かを言い淀む。
祐奈と望桃は賢治の指し示す場所を確認すると、その意味を悟った。
望桃の着物が身体を投げ出した際に捲り上がってしまっていた。スラリとした長い脚が蝋燭の明かりに照らされてなんとも艶っぽい。
「あら……。私としたことがはしたなかったわね」
「ケンちゃん、スケベ!変態!」
「いてっ!?僕!?僕が悪いの!?」
「悪い!全部ケンちゃんが悪い!」
「いたたた……!」
ポコスカと祐奈が怒りに任せて拳を振り下ろす。逃げ惑う賢治を横目に望桃は乱れた着物を直そうとして、ふと手を止める。
その顔には少し意地悪な笑みが浮かんでいた。
着物の胸元をあえて少し開けて、望桃はほんのりと頬を染めて狼狽する賢治を誘う。
狼狽するのも当然か。
この着物を着る時は下は着けていないのだ。
賢治は恐らく捲れたその奥を見てしまったのだろう……。
思慮に没頭し過ぎて、完全に油断していた。というか、自身の姿を失念していた。
それもまた、いつも賢治と一線越えを狙う望桃にとっては好都合。
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