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 「あゆみ先生がおとこの人といるところをしてしまった…」  帰りの車内で、コタは口を尖らせて不満げに言った。  「それを言うならじゃなくてだね」  「え?なになに、にーちゃん、もう一回」  「見つけたっていうより、出会ったから、発見じゃなくてだよ」  「?」  コタは小首をかしげる。  「そう、思いもよらないところでバッタリ会うことをって言うんだよ」  僕がそう言うと、ママが「ユタ、ずいぶん難しい言葉知ってるね」と言った。  「たまたま昨日読んでいた本に出てきてさ、調べたばっかりだったから…」  「意外と勉強熱心なんだね」  「意外とは失礼だな。コタの"なに?"に何でも答えられる兄ちゃんでいたいもん」  「へぇ…」  ママは嬉しそうにニヤニヤしながら車を走らせた。  「…」  コタはブツブツ新しく教えてもらった言葉をつぶやいている。  あぁ、次は「」のネタ探しが始まるな…  すっかり日が暮れた空を眺めて、僕はヤレヤレとため息をつくと、建物の間から東の地平線ギリギリのところに、大きなまんまるのお月様が見えた。  僕はそのお月様に向かって、こっそりとドヤ顔をしてみせた。  
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