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 「にーちゃん、おそい!」  僕が外出から戻ると、コタが手に持っていた紙を見せてきた。    「コタね、ドッキリビンキーの割引券をしたんだよ!今日までなの。だから夜ごはんはハンバーグ!」  わーい!と、コタは万歳して部屋の中をグルグルと走り回る。  誕生日でも何かのお祝いでもないのに、外食なんて久々だ。  コタの言っていることを真に受けて期待が裏切られたことが度々あるので、僕は期待せずに「ママ、コタがビンキー行くって、本当なの?」と聞いた。  「そう、せっかく見つけたしね」  「マジ?よっしゃ!」  僕は小さくガッツポーズをした。  そんな僕の様子を見て、ママはなんだかニヤニヤしている。そして、ジロジロといつもと違う視線をよこす。  「なに?」  僕は(いぶか)しんでママを(にら)んだ。  「何でもないよー」  「何かあるんじゃないの?」  「ないない…ただ、大きくなったなと思ってさ」  そう言ったママが今度は寂しげな顔をした。  「変なの。僕はずっと僕なのに…」  僕が何の気なしにそう言ったら、ママは嬉しそうに「そうだよね!」と、満面の笑顔を見せた。  「ちょっと早いけどさ、土曜だし混むから早めに行こうか」  「え?まだ五時だけど…」  「いいじゃん、行こ行こ。コター、行くよー!」  
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