Episode.1

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二人は一際明るい、広い部屋に入った。スーツを着た男女がわらわらと集まり、片手で数えられる程度の制服を着た若者――同期たちがいた。白い帽子を被った筋肉質な男は、二人を見て手を振った。 「おっ、最後の一人到着だなー!」 「えっ、最後?」 「佐倉(さくら)課長、早いですって…そうそう、今年五人なんだよね。去年はもう少しいたんだけど。」 「去年のビリが今年のビリを連れてくるとは…面白ェ」 「ははっ、言えてるな。今の肩書きだけ見りゃ想像つかねェって。」 「えっ、えっ?」 捜査一課長・佐倉昌行(まさゆき)は豪快に笑い、青年の肩を組んだ。他の先輩局員たちも寄ってきて、内数名はやはり青年を取り囲んだ。日色は忍び足で同期たちの列に並んだ。 「何か、不思議な感じだな…」 「あの人、俺らの一個上なんだよな…?」 「えっ」  日色は驚いた。一個上――つまり、二年目の局員相手にオジサン局員含め、通る度に皆が頭を下げていたのである。先程の状況の奇妙さを改めて実感した。呆然とする新人たちに、先輩局員の一人がある名簿を配り始めた。 「新人共ー、班分けだ。」 「ウチでは幾つか班がありまして、新人の方も何処かに所属することとなっています。同時進行させるのに便利なんです。」 「へェ…」 「ということは…あたし、この三番目の班なんですけど…何て読むんです?」 「“ガンマ”です。…日色春香さんというのは貴方ですか?私、雪野(ゆきの)っていいます。」 「よろしくお願いします…」 可愛らしいショートヘアの女性・雪野はにこりと笑う。彼女と同じ班のようだが、日色がγと知ると周囲はざわつき始めた。 「γ…γって、ここ一年で急成長したっていうあの…」 「ああ。よりによって、天才・“記憶の証人”の後とは…」 「流石に同情するわ…」 「日色、オマエ強く生きろよ…」 「え?」 周りは口々に言う。わけがわからず、日色は先程の青年に目で訴えた。すると青年は先輩や上司を振り払い、「日色春香さん」と話し始めた。その表情は、何処か申し訳なさそうだ。 「ごめんね、周りが言う程じゃないんだけど…さっき嘘付いた。君の“記憶”を見せてもらったんだ。勘が良いわけじゃないんだ。」 「…え?」 「おっ、もう使ったのかー?」 「ああ、さっき名乗ってなかったね。…初めまして、僕は古市(ふるいち)悟史(さとし)。γの一級局員だよ。」 「そうそう、古市はγだけじゃなく、捜査一課のエースだ。四ヶ月目で一級になった超エリートで、能力者だ。」 「…え…ええーっ!?」 日色が先程ぶつかり、此処に連れてきてくれた青年――古市は、捜査一課の誇るエースであった。それも、彼は「“記憶”を見る能力」の持ち主である。この後、日色はすぐに知るとなる。古市の凄さを。何故、彼は“記憶の証人”と呼ばれているのかを。 「早速だが、日色。いつ事件が起こるか分からないし、そろそろスーツに着替えてくれ。」
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