彼氏に振られ、猫になった

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 今日は二十歳になる、特別で最高の誕生日。  そうなるはず…………、だったのに。 「あ~~~~っ! 最悪っ!!」  我慢できずに道端で叫んだら、通りすがりの人にギョッとした顔で振り向かれた。けど、そんなことも気にならないぐらい、ムシャクシャする。  今日は、樹と一緒に水族館へ出かけて、隣接したショッピングモール内のCDショップに入った後、イタリアンで夜ご飯を食べた。  水族館では、珍妙な生き物を指さしながら、笑いあって。  CDショップでは、お互いに最近聴いているおすすめのバンドの話で盛り上がった。樹が予約してくれていたイタリアンの香ばしいマルゲリータピザもすごく美味しかったんだ。  美佳が弘人に連れて行ってもらったデートほどの高級感はなかったかもしれないけど、大学生らしい、幸せなデートだったと思う。  やっぱり、樹のことが好きだな。  そう実感して、一週間前に会った時、弘人の振る舞いと比べて不機嫌になってしまったことを、心の中でひそかに謝罪しながら二人で駅へと向かっていた時だった。 『ねえ、舞。……俺たちさ、別れない?』  青天の霹靂とは、正にこのこと。  今、樹はなんて言った? 『今日は、楽しかった。すげえ、楽しかったよ。でも、さ……俺、分かんなかったんだ』 『……分からなかった?』  あまりにも衝撃的で、壊れたロボットのように彼の言葉を復唱することしかできない。  そんな私に、樹は眉根を寄せながらうなずいた。 『舞へのプレゼント、なにを用意したら良いのかマジで分かんなかった。でも……それを素直に舞に打ち明けて、また空気を悪くするのも嫌だったんだ』  鋭い針で突かれたみたいに、胸が痛んだ。 『俺、そんなスマートな男じゃないから、きっとこれから先も舞をイライラさせる。もうすでに、舞のことがよく分からなくて、疲れちゃう時があるんだよ。だから、さ……』  嫌いになる前に。好きでいられる今の内に別れてほしい、と告げられた。  ただひたすらにショックだった。  同じバンドが好きだったことで意気投合した樹とは、同じ方向を見ていると思ってた。同じものを好きになりがちで、気の合っている私たちは、きっとなんでもわかりあえるはずだって。  そう信じていたけど……。  今にも泣きそうな顔をしている樹を前にして、私は呆然としたままうなずくことしかできなかった。
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