月夜の詩

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その少年はとても綺麗な顔をしていた。 目尻がすっと上がり 形のいい眉は凛と顔立ちを引き締める。 鼻筋はツンと高く 横顔を美しく引き上げる。 唇は上品で静かな膨らみを帯びていた。 少年が現れるのは決まって 月夜のこの場所だった。 綺麗な顔だが 冷たく他が近づく事を許さない。 背が特別に高い訳でもなかったが 小さな顔とバランスのいい四肢は 威圧的な雰囲気を醸し出していた。 その道は子供達が塾の帰りに通る道だった。 今日は月夜である。 この道に差し掛かった子供達は 急に慎重に歩き始めた。 すると、突然それは現れた。 子供達はとにかく驚いて 持っていた教材を見事に放り投げ 「きゃーーーーーーっ!」 炒り豆のように跳ね上がると 一目散に逃げていった。 そうやっていつだって残されるのは 道の真ん中に立ち尽くすあの美しい少年だった。 引き締まった顔を歪める事なく 静かに教材をかき集めると 月の光に吸われるようにいなくなった。
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