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朧が友達とたわいのない話で笑っていると
一人、とぼとぼ歩いている千影が見えた。
急いで友達と別れて千影を追いかけた。
いつもなら
すぐ気がつくのに全然気付いてくれない。
朧は鞄を適当なところに強く打ち付けて大きな音を出した。
チラッとこっちを見たくせに
見たこともないほど寂しそうな顔をして行ってしまった。
最近、千影は元気がない。
みんなといても、あまり笑わなくなった。
時間が合わなくなっても
話題がずれてきても
千影はずっと味方だ。
朧は走った。
やっぱりだ。
あの道を歩く千影が見える。
真っ直ぐいけば朧の家なのに
ふらふらと道から外れている。
獣道の方に入ったら危ないってわかってるのに。
様子がおかしい。
見えてる。
朧には見えているのに千影は気付いてくれない。
大きく手を叩いても
足を踏み鳴らしても
鞄を手当たり次第ぶつけても
どうしても振り向いてくれない。
そっちに行ったら危ないのに。
朧は本気で焦り出した。
鞄を放り投げて全力で走り出した。
冗談だったら今すぐやめて欲しかった。
あと、数メートルで道がなくなる。
ダメだ。
どうしても追いつかない。
どうしても、気付いてくれない。
朧は息を大きく吐き出した。
筒を吹き抜けるように空気が喉を吹き抜ける。
もう一度、大きく息をたくさん吐き出した。
出ない。
どうしたら、、どうしたら、、
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「朧、真似してみて」
「ほら、私の喉触ってみて、、震えてるでしょ」
「お・・ぼ・・ろよ」
「よくみて私の口・・どお?」
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小さくなっていく千影の背中に向かって
もう一度、朧は叫んだ。
「ぅぅ・・・っっ」
もう、ほんとに止まって欲しかった。
立ち止まって拳を握ると
「うぅ・・おおーーーっ!!」
出た!
千影の動きがピタリと止まった。
「おおおーーぶおーーーールオーーーー」
千影の背中がピタリと止まって聞いている。
「おおおーーぼーーーろおーーーっ!!」
千影が振り向いた。
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