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「初めまして。吉村ゆりえです。えーっと…迅さん、とは……彼女(仮)ってとこかしら?」
ゆりえさんの言葉に、俺はなんだか照れて頭をかいて横を向くと、大地はニコニコ微笑んで頬杖をついて頷いた。
「ゆりえさん。宜しく。まだ彼女じゃないんだ?」
「まあ、そう、ですね。私の方が、失恋したばかりですぐに乗り換えるみたいになるから、迅さんに悪いもの」
ゆりえさんは肩をすくめて言うと、大地は「へえ」と言いながらチラッと俺を横目で見ている。
痛い。
痛い痛い。その視線。何か言いたそうで怖い。
「じゃあさ。迅のこと、今は少しは好き?(仮)って言うくらいだから、彼女になる可能性はあるってことでしょ?どのくらい期待していいの?」
「だ、大地っ?!」
俺は慌てて大地の腕を掴むが、大地は微笑んで「まあまあ」と言って俺を宥める。すると、ゆりえさんはチラッと俺を見て優しくニッコリ微笑み、
「迅さんとは、まだお互いのこと、何にも知らないんです。私のことを好きだと言ってくれた迅さんのことを信じたいし、私も今は迅さんのこと、ちゃんと好きだと思います。でも、前の恋を完全に忘れられてないし…。その痛みがもう少し薄らぐまでは…(仮)で」
と言うと、大地は「ええっ?」と言ってさらに身を乗り出して来た。
「好きって気持ちがあるならさ、付き合っていけばいいんだよ。前の恋を忘れるなんていつ分かるの?わかんないでしょ。だったら、たまには流れに身を任せてみればいいんじゃないかな。少しでも、好きって気持ちがあるんだから」
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