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大地は同い年とは思えないような大人発言をして、ニコニコ笑っている。頬杖をついた指が自分の頬を軽くトントンと叩き、俺を見つめて、「だろ?」と言うと、俺はテーブルに肘をついた。
「俺たちは…お前みたいに器用じゃないんだよ」
「えー?俺、めっちゃブッキだよ。いつも聖香に怒られてるし」
「そうじゃなくてさ。今までの大地を見てると、ってこと」
「う?どこらへん?」
「天然かよ」
俺と大地はそう言って笑い合うと、ゆりえさんは少し考え込んでいたけれど、すぐにまた顔をあげて、
「大地さんも、色々あったんですか?」
と訊ねると、大地は頭を横に振った。
「いや。俺は自分の気持ちに忠実すぎて、周りの人を傷つけたりして来た悪い例」
大地はそう言って頭をかいて笑っている。ゆりえさんもプッと吹き出して、
「そうなの?じゃ、今は?」
ともう一度訊ねると、大地はニッコリ笑ってゆりえさんを見つめた。
「それでも、好きな人を諦めなかったから、ずっと一緒。子供も二人。ウチの実家で、両親と一緒に暮らしてるんだ」
「すごい…!貫いたのね」
ゆりえさんも驚いて目を丸くすると、大地は大きく頷いて立ち上がった。
「前の恋をしっかり踏ん切れないうちに、次の人に行っちゃった。元々その人のことを好きだったのに、見て見ぬふりしてきたんだけど、気づいちゃったら止められなくてさ。だから、周りの人たちも巻き込んだよ。迅もね。でも、そのやり方しか知らなかった。ガキだったんだ。でも後悔は全然ない。気持ちは、決まってたから」
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