第7章 セフレと恋人の差は?

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「分かる気がする。あんなお友達がいて、羨ましい。素敵な財産よ。お友達って。…私は、そんな風にいえる友達、いなかった。いつも、一人だったの。紫乃は明るいから、誰とでもすぐに仲良くなるし、甘え上手。私とは正反対で…。羨ましい。私はそんな風に器用に生きられなくて、仕事も風俗しか残ってなかった。どうしたらいいんだろうね」 ゆりえさんは寂しげな笑顔で俯くと、俺は少しテーブルに身を乗り出して腕を伸ばすと、ゆりえさんの頭を静かに撫でて、 「焦ることはないよ。人それぞれじゃん。みんながみんな器用に生きてるわけじゃない。俺も…。俺たちの仲間内でも、俺が1番不器用でさ。恋愛もね。ゆりえさんの体を色んな男が見てるって思うと腹立たしいけど、その仕事を大事にしてるなら、俺は何も言うつもりはないし、受け入れる。たまに愚痴るかもしんないけどね」 と言って微笑んだ。ゆりえさんは俺を見つめて涙ぐんで頷くと、 「…私、…迅さんと付き合いたい。彼女に、なりたい」 とハッキリ言うと、俺は驚いて目を見開いた。 「前の恋なんか…どうでもいい。彼に気持ちが傾いていただけなのかも。今となってはわからない。でも今は、迅さんのことが、凄く好き。まだトータルで5回くらいしか会ってないのにね」 「それ、デリも入れて…だろ」 「そうそう」 俺とゆりえさんは微笑みあって、俺の手がゆりえさんの頭から頬に移動した。ゆりえさんはその手にそっと触れて目を閉じると、すぐにまた瞼を開けて俺を真っ直ぐ見つめた。
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