第8章 あの男を目指してるわけでは無い…はず?

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「あ。はい。一応。吉村ゆりえと言います」 ゆりえもつられるように聖香ちゃんに挨拶してぺこりと頭を軽く下げた。 「初めまして。坂井聖香と言います」 「あ。えーと、坂井大地さんの…奥様?」 「…オ、オクサマ…」 聖香ちゃんはその言葉に少し照れたように頬をピンク色に染めた。 「結婚して何年目だよ〜、聖香ちゃん!見かけによらずウブいなぁ。あははは」 と津門が揶揄うように笑うと、聖香ちゃんはギロッと横目で津門を睨みつけた。 「あれ?!急に体が動かないぞ?!」 津門はいつもの調子を取り戻し、一人ギャグ一人ツッコミ。 「んなわけあるかーい!」 と言って聖香ちゃんの肩をポン!と軽く叩いて一人で笑っている。 こいつは、ほっとこ。 祥生はゆりえを見て瞬きの回数が多い。ゆりえに聞いたところ、祥生を接客(?)したことはないようだ。でも祥生はデリヘル店のホームページなどで女性キャストの情報などは知ってるんだろう。ホームページでも、顔はモザイクされているらしいけど。今は辞めたから、ホームページからも消えている。よくよく考えると、モザイクあっても、他の男たちが見るのは嫌だもんなぁ。 「祥生はあの店に連れてってくれたから、俺は感謝してるんだ。なんだかんだで1番よく会ってる奴かな」 と俺が祥生をゆりえに紹介する。祥生はハッと我に返り、 「あ。えーと。はじめ、まして。林田祥生です!迅を宜しく!」 といきなり大きな声で言ってテーブルに額がつくくらい頭を下げた。
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