第8章 あの男を目指してるわけでは無い…はず?

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雪子おばさんは大地の腕を離して、 「じゃ、あとは若い人たちで楽しんで下さいね」 と言ってカウンターの方にテクテクと歩いて行った。大地はすぐに聖香ちゃんの隣に座ると、 「どうでもいいけど、…俺もこれ食べたい!ヤナコッタ!!」 と聖香ちゃんの器を指差して言うと、聖香ちゃんは呆れたような眼差しで、 「ちょっと…。みんな、相手にしちゃダメよ。大地ったら、最近変な親父ギャグ言うの。怖いわぁ」 と俺たちを見回して小声で言うと、俺たちは顔を見合わせて苦笑いだ。大地は面白くなさそうに頬を赤く染めて、 「誰か、『それはパンナコッタだよ』ってツッコミしてくれよ。ただのイタイおっさんみたいじゃん!」 と言いながら口を尖らせている。 「そういうとこは、父親似なんだよなぁ、大地は」 津門もため息混じりで言うと、祥生もしみじみ頷いてデザートフォークを手に取り、米粉のミルクレープの端の尖ったところからカットして食べていく。聖香ちゃんはパンナコッタをスプーンで掬い、透き通るような鮮やかなグリーンのシャインマスカットを乗せて大地の口元に運ぶと、大地は嬉しそうに目を細めて大きく口を開けた。 「うわっ。デレてるぅ」 ゆりえは驚いて口元を押さえると、津門と祥生も微笑んで大地を見つめている。 「新婚でもないのに、このベタベタぶり。まさしく父親似」 「これで二児のパパだもんなぁ」 津門と祥生が交互に言うと、ゆりえは身を乗り出して大地と聖香ちゃんのイチャつきぶりを感心したように見つめている。
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