第8章 あの男を目指してるわけでは無い…はず?

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ゆりえは驚いて目を見開くと、大地はストローをグラスに入れてアイスココアを啜った。 「母さん、愛想笑い苦手だからさぁ。もっと愛想振りまいてれば、テレビ出演も増えたと思うのに」 「大地もね?余計なことは言わないでいいのよ」 「ま、その前に、親父が許さないか」 「…ノーコメント!」 大地はみんなにマザコンと言われても引くことのない、自他共に認めるマザコンだ。とは言っても、母親にベタベタするようなマザコンではないので、嫌味も偏見もない。 「愛想笑いなんかできなくても、今までちゃんと生きてこれました。誰にも迷惑もかけてません。理の方がよっぽど人様に迷惑かけまくってるわよ。髭生やしても意味なかったわ。あ、ゆりえさんは接客業の経験は?」 雪子おばさんがゆりえの顔を覗き込むと、ゆりえはチラッと俺の方に視線を流した。が、俺は微笑んでコクリと頷いてみせる。ゆりえはフッと微笑んでまた雪子おばさんを見上げると、 「こういうカフェなどの接客はしたことないんです。とは言っても、事務もそれほどスキルが高いわけではないんですけど。面接ではイレギュラーなことを突然質問されると、頭の中真っ白になってしまって」 と言って肩をすくめている。 「でも私、ちゃんと就職したいし、仕事決まらないと迅さんの部屋に引っ越せないんですよ。とは言っても、ずっと待たせるのもやだし」 とゆりえは言って「はあっ」とため息をついた。津門たちは目を見合わせてニヤリと笑うと、同時に不思議そうに俺を見つめてきた。 「その話は、聞いてないなぁ」 と、津門。
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