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ゆりえは立ち上がり雪子おばさんと向かい合わせに立つと、
「あの。…日を改めて面接に来ても良いですか?仕事をするにあたって、必要なこととか、仕事内容の詳細や福利厚生のこと、お給料のことなど、聞きたいです。それから、社会人としてのマナーのことも…」
と言うと、雪子おばさんは嬉しそうにニッコリ笑った。
「あなた、結構しっかりしてる。こういう話を持ちかけて、そのまま食いつく人だっているのに、ゆりえさんはちゃんと筋を通そうとしてる。そういうとこ、なかなか真似できない。偉いわ。尚更、一緒に働けたらいいわね。じゃ、…週明けの月曜日。午後2時頃、ここに来れますか?」
「わかりました。では、月曜日、午後2時。改めてお伺いします」
ゆりえと雪子おばさんはお互いに会釈を交わし、雪子おばさんはカウンターに戻って行った。ゆりえさんは頬をピンクに染めて椅子に腰を下ろすと、俺を見つめて、
「やった!まさか、こんなところでこんなお誘いがあるなんて思わなかった。すごい!迅、ありがとう!!」
と言って嬉しそうにはしゃいでいる。こんなところ、あまり見たこともない。めっちゃ嬉しそうだ。俺はテーブルの脇から手を伸ばしてゆりえの手を握りしめると、
「うん。良かったよ。とりあえず面接、頑張れ」
と言うと、ゆりえは大きく頷いた。そこにゆりえの後ろに男が立ち、首を伸ばして俺とゆりえが手を繋いだところを覗き込むと、
「なんだよ。手かよ。太ももくらい撫でてんのかと思ったぞ」
と呟くと、俺たちは同時にその男を見た。
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