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「で。…り。…へ……」
最後まで言えず、雪子おばさんはポッと頬を赤く染めている。と、大地はくすくす笑って、
「ゆりえちゃん、ごめん。ウチのお母さん、この手の話しは中学生レベルだから」
と言うと、ゆりえはハッとして口元を手で押さえた。
「あ。…そういう意味の迅の目配せだったのねっ」
「まだまだ、愛が足りなそうだな」
祥生もボソッと言うと、ゆりえはさらに肩をすぼめて、「ごめんなさい」と小さな声でつぶやいた。理おじさんはニッコリ笑って雪子おばさんの肩を抱くと、
「とはいっても、こいつもなかなか風俗なんかに負けないコトを…」
と明るく言いかけると、雪子おばさんは思い切り肘を引いて理おじさんの脇腹を打った。
「余計なこと言わないっ!」
「イデッ」
理おじさんは眉を顰めて脇腹を押さえると、雪子おばさんは改めてニッコリ微笑み、
「じゃ、ゆりえちゃん。前職の話は…まあ、イイとして、面接お待ちしております。それと私の電話番号ね」
と言って名刺をゆりえに差し出した。ゆりえは今日一番の笑顔で頷いて、名刺と茶封筒を受け取った。
「ありがとうございます!」
*
その日の夜、ゆりえはソファの前のテーブルに鏡をセットして念入りに肌の手入れをしていている。俺は歯磨きをしながらそんなゆりえの姿を見つめて微笑み、
「やる気満々だな」
と言うと、ゆりえは化粧水をペタペタ頬に当てて頷いている。
「それにしても、坂井雪子さんと知り合いなんて、迅、凄いわね」
「大地のおかげで、結構お偉いさんとか芸能人とかに会わせてもらってるよ」
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