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週明け。
ゆりえはリクルートスーツを着こなして、明るい髪色も黒に染めて軽くカットしてきた。肩甲骨あたりまでの髪を後ろで一つに結い、寝室を出ると、リビングのソファに座り化粧している妹の紫乃が横目でゆりえを見る。
「…なにそれ。面接にでも行くの?お姉ちゃん」
「うん。知り合いのお店を紹介してもらったんだ。紫乃、今日は午後から出勤してなのね」
「うん。…残業続きだったから…」
紫乃は口紅を引いて唇を真一文字に結ぶと、「パッ」と言ってティッシュを一枚軽く唇に当てた。
「…名取さんと、…うまくいってるの?」
「え?」
ゆりえはカバンに履歴書を入れて蓋を閉めると、振り向いて紫乃を見た。
「…仕事決まったら、…ここ、出ていくわ。紫乃。ここの家賃厳しいなら、引越ししてもいいのよ。お金ある?なんなら少し私が…」
と言いながらゆりえは紫乃に歩み寄り右手を紫乃の肩に近づけると、紫乃はゆりえの手を振り払い、
「そんなのはどうでもいい!名取さんと付き合うのは…私よ!私だったのに…!」
と声を荒げて言うと、ゆりえはドキッとして紫乃を見つめて眉を顰めた。
「紫乃。…まだ、好き、だったの?」
「当たり前でしょ?!勝手すぎるよ!私は絶対認めないから!!昔私がしたことのリベンジのつもりかもしれないけど。でも、名取さん、…風俗やってた彼女なんて、気持ち悪いんじゃないかな!?」
紫乃は拳をグッと握りしめて怒鳴ると、ゆりえは「えっ」と言って目を見開いた。
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