第1章 恋がしたい

2/17
前へ
/166ページ
次へ
何年、恋愛をしていないだろう。 女の人が嫌いなわけでも、男が好きなわけでもない。ただ、普通に恋愛したいのに。 昔、イトコを好きだったことがあったけど、結局駄目だった。その後も大学で一度だけ彼女ができたけど、やっぱり上手くいかずに数ヶ月で終わった。その彼女が別れ間際に、こう言った。 「あなたは、誰のことも好きにならないの。だから、私の気持ちにも気づかないし、気遣うこともできないのよ」 その意味は、よくわからない。でも、ひとつだけわかる。 『誰のことも好きにならない。』 そうかもしれない。 好きだと思うけど、結局『恋愛』なのかどうか、自分でわかっていないと思うから。 周りでは、結婚したり、出産まで進むカップルが増えている。幼馴染みの友達も結婚して、幸せなカップルとして今も大恋愛中だ。そんな人たちを見ると、羨ましくもあり、少し妬ましいとさえ感じてしまう心の狭さが、自分を卑屈にする。自分が、他人に心を開けないだけなのに。 寂しいなんて、嘘だ。 誰も愛さないなんて、嘘だ。 俺はこのまま、1人で生涯を終えてしまうのか。 誰かのことを思って、恋焦がれて、胸を熱く昂らせて、抱きしめて…。 そして、その人も自分のことを大切に思ってくれる。 そんな恋愛、俺には一生無理なのかもしれない。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加