第1章 恋がしたい

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* 俺の名前は、名取迅。迅速の迅と書いて、シュンと読む。なんでも「疾風迅雷」から来てるらしい。雷が激しい日に生まれたから、とか。『嵐』という名前も考えていたそうだけど、父親の足が早いから『疾風(はやて)』の候補もあり、いろんな意味があって、揉めて、結局『(しゅん)』に決まったそうだ。 両親は健在。あと、弟と妹がいる。だが、あまり仲良くないので、連絡を取り合うこともない。通話もメールも、滅多に来ない。 俺は小学生の頃、テレビで空手の試合を見て興味を持ち、すぐに空手教室に通わせてもらった。筋がいいと褒められて、有頂天になったのは母親だ。それからは俺にべったりついてきたけど、中学は私立中学に進むように言われた。だから成績が落ちると、よく叱られたっけ。でも、俺はいつの間にか空手より、友達といる時間の方が楽しくなっていた。私立中学で勉学に勤しむよりも、仲の良い友達と学校で笑い合って、寄り道して、遊んでる時間を選びたかったから。空手を始めてから母親がべったりくっついている時は、道場でも友達を作れなかった。同じ道場に同い年の、同じくらいの実力の少年がいたけど、彼と仲良くなるまでに少し時間がかかった。でも彼が『中学、同じとこになったら、一緒にいような』と言ってくれて、それが凄く嬉しくて、俺は地元の中学に進むことを親に説得した。 それから、中学は友達が増えて俺の学生生活が変わっていった。
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