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涌田さんにシャワーをバトンタッチして、ベッドに腰掛けた。
備え付けの水はあるが、冷蔵庫から取り出したビールを飲む。飲み物とかルームサービスの料金は、帰りに精算機で払う仕組みだ。
今日も暑かったから、ビールの喉越しがうまい。
本当なら初対面の相手とどこかで一杯飲んで会話でもしてから、ホテルに誘おうと思っていたのだ。
あのときは、だいぶ混乱していた自覚がある。
「涌田さんが『シン』だったとか……アプリやってたの予想外すぎだろ……」
ゲイなの隠してたのかな。まぁ俺みたいのは社会への反抗心を兼ねた例外で、あえて会社でオープンにする必要なんて全くない。
ただ涌田さんがあまりにも性的なイメージからかけ離れている人だから、本当に抱いていいのか不安になってきた。
アプリで色気のあるやり取りはほとんどしていなかったけど、バニラセックス――挿入なし――を希望しているなら先に言うはずだ。それがマナーだし。
(そもそも抱けるのか?見た目は許容範囲内だけど、勃つかな〜)
そんな心配をしていると、ちょうど涌田さんがバスルームから戻ってきた。
――あ〜〜〜〜〜、抱けるわ。
瞬時にそう思った。
風呂上がりでホカホカの涌田さんは、俺と同じタオル地のバスローブを身に付けていた。
肌が上気して顔から首、胸元まで薄赤く染まっていてなかなかそそる。
濡れたせいでぺたんとした前髪が邪魔なのか、左右に分けていた。明るく見えるから、絶対そっちの方がいいのに。
「涌田さんも、なにか飲みますか?」
自分のビールを指さして問うと、表情を固くした涌田さんが首を振る。それでもなにか飲んだ方がいいだろうと水のペットボトルを開けて手渡した。
受け取った水をひとくち飲んだ涌田さんは、緊張しているそぶりで口を開いた。
「あの……今だけシンとして接してくれないか?敬語もいらない」
「……じゃあ俺もRYOとして聞く。本当に挿入までシて大丈夫か?」
「そ、ゴホッ。ゴホッ……も、もちろん。あ、で、でも君が無理なら強要しないか……わぁっ!?」
言質は取った。
ぐずぐず喋る涌田さんの手首を、グイッと引いてベッドの上に乗せる。キングサイズのベッドが軽く軋んだ。
水が溢れないようにペットボトルはヘッドボードに置いて、俺は座ったまま子猫を呼ぶように手招きした。
「――おいで、シン」
それだけだ。
たったそれだけで、まるでスイッチが入ったかのようにシンは表情を蕩けさせた。
四つ這いの状態で俺のもとにやってくる姿は、想像以上に蠱惑的だった。えっろいな……
たどり着いたシンの顔を両手で掬い上げる。じっと目を見つめれば、潤んだ瞳が見返してきた。
(この人も、俺の顔が好みなんだろうな)
「キスは?」
「して」
許可を得てそっと唇を重ねた。
俺よりも薄い唇は、柔らかくてしっとりとしている。くすぐるように触れ合わせ、戯れに上下の唇を挟むように愛撫した。
シンはこれだけで感じてくれているのか、時おり鼻から抜ける声が甘い。
腰を自分の方へ抱き寄せ、身体を密着させた。やっぱり細い、けれど男の身体つきだ。そのことに情欲をそそられる自分がいる。
バスローブの上から腰を撫でると、小さく「あっ」と声が漏れた。その隙を逃さず口内に入り込み、油断していた舌を絡めとった。
一生懸命ついてこようとする舌を可愛がりながら、唇の裏から歯列をなぞり、上顎まで反応をみて隅々まで刺激する。
「ん、っ、……んぅ」
息継ぎが下手なのか、はふはふと苦しそうな様子がやけに新鮮で可愛い、かもしれない。
そのまま押し倒すと、シンは荒い息を吐きながら顔を真っ赤にしていた。
(これだけでこんな真っ赤になっちゃって……まだなにもしてないのになー)
俺がニヤニヤと見つめていることに気づいたのかシンは腕で顔を隠そうとしたが、それは俺の両手が阻んだ。
顔の左右に腕を押し付けるように拘束すれば、戸惑うような表情を見せる。
あー……これは、
「……かわいい」
「え?――ひゃんっ!」
首筋にちゅっとキスを落とすと、シンは驚いたように声を上げた。舌をつぅっと這わせれば、ゾクゾクするのか身体を震わせながら耐えている。
もう拘束しなくても、両手は勝手にシーツを掴んでいた。首が弱いんだろう。演技じゃないのがわかる。
ここまで反応がいいと楽しいなー……。
俺はそのままシンの胸元をひらき、薄い色の尖りにちょん、と触れた。ぴくっとしたのは乳首の方だ。
顔を上げると、本人は先ほどよりも落ち着いているように見えた。
(ここは感じにくいのか、開発されていないだけなのか……)
ちょっとだけ立った乳首を指の腹ですりすり、優しく刺激すると、徐々に息が上がってくる。素質はありそう?
試しに片方をちゅう、っと吸い上げた。
「あ!」
そのまま口の中で舌先をつかって先端を舐め転がせば、途切れとぎれに嬌声が聞こえ始めた。
もう片方の尖りを口に含み、唾液に濡れた方は指先でつまむ。両方を同時に虐めると、背筋を反らしてシンが応えた。
「ぁん!んやぁ……だめ……」
駄目といいつつ俺に胸を押し付けていることに、気づいているのかいないのか。勃っているものが腹に当たって、ちゃんと快感を得ていることがわかる。
俺もシンの反応に興奮しきっていた猛りを、ゴリッと太ももに押し付けた。
「!――りょう、」
「ん?あー、いいからいいから」
シンが俺の下半身に手を伸ばそうとするのを遮って、自分でバスローブの紐を解く。身体が熱かった。
舌足らずに名前を呼ばれると、たまらない気持ちになるなー。
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