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こまやかな陽の光が、まるで物質のようにわたしの鱗へ降り落ちている。わたしは確かに暖かさの質量を感じている。首を伸ばす。もっと、もっと高く、巨木の枝のように、陽と風を求めて。きしきしと、首や肩に並ぶ硬質な鱗が音を立てる。耳をそばだてれば少し先で佇む仲間たちも、首を伸ばしながら鱗を鳴らしている。大昔にはこの星でもっとも大きかった山の、数百年前までは日常だった光景。
仲間たちとただこの場で呼吸していた頃の、穏やかな夢。
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_____ 確かめるような、祈るような気持ちで目を開く。そこに広がっているのは幻想的な夢の中とは比べようもないほど、色褪せた自然の広がる山の景色。
取るに足りない、でも取り戻しようのない日々の夢を、わたしは数え切れぬほど繰り返し見ている。夢から現実に戻ってくる時、何も変わらないようでいて緩やかに全てが変わってしまった世界に、毎回浅く絶望しながら。
淋しいことだ。こんな感傷ですら以前は感じることもなかったのに。わたしもどうしようもなく変わってしまったのだ。もう何も考えないでおこうと、再び目を閉じた。
「おはよう」
その小さな声で白昼夢の真ん中を柔らかく裂いて、いつもいつもその声の主は、わたしの微睡に割って入った。
「起きているなら、おはようと言われたらおはようと返すんだ。竜の世界では違ったのか?」
知るか。目も開けずに首元の鱗をすこし逆立てる。もう数百年も前に喪われた竜の世界に、そんな気色の悪い道理はない。もちろんこいつのような可笑しな輩もいなかった。
「100日ぶりに来たんだ。元気にしてたか」
100日なんてわたしにとってはまばたきのような間だった。わたしはいつも眠たくて、だというのに夢を見始めるころになればすぐ、いつもこの男はやってきた。元気なんかじゃないお前のせいだ、と薄目をあけて睨むと、阿呆な顔で嬉しそうにするのが見えたのですぐに瞼を閉じる。表情まで五月蠅いだなんて、なんてやつだろう。
ぎしぎしと躰を軋ませながら首を持ち上げる。夢で見たのと、同じ場所で。しかし此処にはもう空気に満ちる光の粒はない。朝露に濡れる樹々にも、神聖はもう宿っていない。起き上がり首を伸ばすことすら億劫で、やがて再び顎を地面に戻すことになった。
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