冒険譚のラストシーンにて

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_____夏の終わりから一度も眠らずに自分の内側と向き合い続けて、そうして秋が来た。今年の秋は実りも、彩りも、黄金色の輝きも、何もかもがこれまでで一番美しく、それは間違いなく男の成しえたことだった。 頭や心は、冴えわたっている。光る湖面のようにその下にいくつもの感情を隠しながら、わたしは取るべき選択肢をもうちゃんとわかっていた。 次の季節がくる前に、争いがやってくるだろう。これを男に知らせる術はなく、知らせたところで、逃れられない戦火に多くの犠牲が出るだろう。 男が護った街もひとも山も、何一つ、奪われることにわたしは我慢ならない。 植物以外の何者かに、なりたいと願ったのは初めてのことだった。わたしはかつて人間たちに着せられ嫌悪していた呼び名を____「最悪の怪物」を、踏襲しようとしていた。
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