月夜の晩、神様に出会う

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高台から見下ろす街並みはオレンジや黄、白といった明るいネオンがキラキラと瞬き、まるで宝石箱を覗き見ているような様相を醸し出している。 こんな素敵な立地にある結婚式場では、明日のパーティーのために着々と準備が進められていた。 私は花屋に勤めていて、花を会場に届けセットしたところ。作業が終わって結婚式場から出る頃にはもうすっかり日も暮れて、まんまるい月がぽっかりと浮かんでいた。 「やばっ、もうこんな時間」 時計を確認して慌てて帰る支度をする。社用車で来ているため一度店に戻らなくてはいけないし、この辺りの街灯は少なく街に出るまで夜道が怖い。 エンジンをかけるとヘッドライトが点灯した。 ラジオからは、夜にピッタリなしっとりとしたパーソナリティーの声が心地よく耳に流れ込んでくる。 今夜は月明かりが綺麗でいつもより星はあまり見えない。明るい藍色の夜空が静かに帳を下ろしていた。 結婚式場を出ると緩やかな坂道が丘をぐるりとまわるようにしながら街まで続いている。僅かに下ったところで大きな鳥居が見えた。木々に囲まれている神社の中、その鳥居だけはすっと抜き出ていて月明かりの夜空にくっきりとシルエットを映し出している。 「えっ?!」 思わず声が出た。 その鳥居の上に人影が見えたからだ。鳥居の上に座って夜空を見上げている、そんな風に見えた。 「……なんて罰当たりな。ていうか、どうやってのぼったの?!」 意味がわからなすぎて運転中だというのにそちらを凝視してしまう。そしてその人影はふいにそこから飛び降り、ついに驚きすぎた私にブレーキを踏ませた。 「……うそ、落ちた?」 人通りも車通りもない暗く細い道。このまま立ち去ることもできるけれど、もしもあれが人だったら大けがをしている可能性もあり、見て見ぬふりをすることができない。 車を安全な場所に止めた後、私はその神社に向かって歩いていた。 ……人だったよね? ……落ちたよね? ……幽霊じゃないよね? 心臓がドクンと嫌な音を立てる。 生まれてこの方一度も幽霊を見たことがない私の霊感はゼロといえる。だから幽霊の類いではないと思うのだけど。 でもその代わりと言っては何だけど、幽霊とは違う人ならざるモノを見た経験があるのもまた事実で――。 まさかね、と思いつつも私はそれを確認するために神社の入口に立った。
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