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翌日の朝食は煌が作ってくれた。まだ体調が万全ではない優鶴の身体を気遣ってか、お粥を作るのだと張り切っていた。火加減を間違って少し焦がしていたけれど、滅多に料理なんてしない煌が自分のために作ってくれたことが嬉しくて、優鶴はぜんぶ食べた。
午後は二人でテレビを観ながらダラダラした。夜には体調もすっかり回復し、手を繋いでコンビニにアイスを買いに行った。
優鶴はガリガリ君で、煌はカルピスバー。二人で食べながら夜道を帰っているとき、急に煌が立ち止まり、恐る恐る訊いてきた。
「兄貴は俺のこと……好きってことなんだよな……?」
そういえばちゃんと言葉にして伝えていなかったことを思い出す。不安に表情を曇らせる男が、こちらにじっと視線を向けている。
なんだか意地悪したくなる。優鶴はニッと唇の端を上げて「あたりまえじゃん」と笑った。
「おまえは俺のたった一人の家族で……恋人だ」
表面の硬いラムネ味のアイスバーを前歯でガリッと砕く。冷たい欠片が舌に乗り、ぬるい夜風を心地のいいものにしてくれる。
「俺はおまえが好きだ。これだけははっきり言っとくよ。煌は俺の男だって」
煌はキョトンとする。あまりにも直球な告白すぎて、頭の理解が追いついていないようだ。「え、え、え」と挙動不審になりながら、前髪をひたすら触っていた。
優鶴の言葉を噛み締める余裕ができたのだろう。やがて困惑顔をくしゃくしゃに綻ばせていった。幼く見えるその顔が好きだと改めて思う。
煌が目尻に涙を光らせ、勢いよく飛びついてくる。
煌の背中越しに広がる夜空を見上げながら、優鶴は笑って大きな背中をさすった。
〈了〉
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