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「よかった。きちんと出てきてくれました」
フィリップさんはそう言った後、私にグラスを渡す。黄色のカクテルが入っていただけのはずだったのだが、フィリップさんが触れた後、グラスの中にはリンゴが浮いていた。艶やかな赤いリンゴは、カクテルよりも美しく見えた。
「すごい!これ、マジックですか?」
フィリップさんの職業はマジシャンなのだろうか。はしゃぐ私の横で、彼はどこか切なげに微笑む。
「このリンゴには、あなたの過去の記憶が封印されています。飲んでください」
「記憶?」
一体、彼は何を言っているのだろうか。首を傾げながら私はカクテルに口をつける。
リンゴの香りが鼻腔に広がり、胸焼けしてしまいそうなほどの甘ったるい味が舌の上を通り、喉の奥へと入っていく。そしてーーー私の頭の中に、次々と思い出が流れ星のように降ってきた。
「……思い出してくれましたか?」
期待したような目でフィリップさんーーー否、フィリップが私を見つめる。私は彼の頰を両手で包む。
「ピーターパン?」
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