足裏の妖精

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 暫く経ったら寛ちゃんは、そんな事はすっかり忘れてしまって、それでも毎日頑張って学校にも行くし、宿題もちゃんとやって、忘れ物もないように努力している。  でも、たまには忘れ物をしてしまう事もあるし、熱が出て学校を休んでしまう事も何度かはあった。  仲良しの上山くんと外で遊んでいると、雨がポツポツと降ってきた。  家に帰ろうかという話にもなったのだが、遊び始めて幾らも時間が経っておらず、まだ二人とも遊び足りないので、寛ちゃんの家で遊ぼうという事になった。 「ただいま! 」 「お邪魔します! 」  二人で元気に玄関を上がり、お母ちゃんに断って、居間の隣の部屋で二人でお絵描きをすることにした。  暫くするとお母ちゃんがジュースを持って部屋に入ってきて 「ほんならね」 と部屋から出て行ったのだが、どういう訳かジュースの入ったグラスが三つお盆の上に置いてあった。  二人で不思議やなぁ、お母ちゃんは自分の分を間違えて置いていったんちゃうか等と言い合ってから、得したなぁと余分の一杯は半分こして美味しく頂く事にした。  雨の日なので暗くなるのが少し早いからと、お母ちゃんが上山くんのお母さんに連絡して、途中まで迎えに来てもらうことになった。  上山くんは名残惜しそうにしていたが 「ほんならまた明日学校でなぁ! お邪魔しました! 」 と言って帰って行った。  それから、お母ちゃんと二人で、お姉ちゃんをピアノ教室まで迎えに行く。  二人で傘を差して、網野さん家の桜の下を歩きながら、話は自然と今日の事になった。 「そういえば、いつも遊んでるから上山くんはよう知ってるけど、もう一人の子ぉは、あの子は誰やったん? あんまり見ぃひん子ぉやなぁ」 とお母ちゃんが変な事を言い出した。 「え? 誰って、上山くんしかいてへんよ? 」 「あ、そやなぁ、そう言えば、最初はもう一人おるんかと思ってたら、やっぱり上山くんしかおらんかったもんねぇ。帰りもあの子一人やったし。お母ちゃんの見間違いやったんやねぇ」  そう言ってお母ちゃんはいつもの優しい笑顔で、今日は何が食べたい? とか、お姉ちゃんは今日はピアノの先生に叱られてないやろか? とかたくさんお話してくれるのだが、寛ちゃんの頭の中は、やっぱりまた、座敷童の事で一杯になっていた。
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