足裏の妖精

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 寛ちゃんには、二つ年上のお姉ちゃんがいる。    お姉ちゃんは意地悪だ。  いつだったか、寛ちゃんが熱を出した時には、寛ちゃんの事を置いてお父ちゃんと二人で動物園に行ってしまった。  晩ご飯のおかずにトマトが入っている時には、テレビに夢中の寛ちゃんの目を盗んで、寛ちゃんのお皿にトマトを移動させる。  そうして素知らぬ顔でお母ちゃんに、 「ほら、ちゃんと食べたよ」 なんて言うのだ。  この前なんかお姉ちゃんは、早く眠らねばと一生懸命目を瞑っている寛ちゃんを跨ぐように仁王立ちで立って、何やらニヤニヤ笑ってから、寛ちゃんが大切にしているロンドンバスのミニカーを、寛ちゃんの股間目掛けて落下させたのだ。  その時には、寛ちゃんの悲鳴を聞いたお母ちゃんに流石にこっ酷く叱られていた。    だけど寛ちゃんは、そんなお姉ちゃんが嫌いじゃない。  毎朝、お姉ちゃんは、お姉ちゃんの友達の愛ちゃんと、寛ちゃんの三人で一緒に学校まで行ってくれる。  お姉ちゃんが熱を出した日には、愛ちゃんと二人で学校に行く羽目になったけど、その時は気まずくて、恥ずかしくて、やっぱりお姉ちゃんがいないと寛ちゃんは困るなあと思ったのだ。  お姉ちゃんは背が大きい。  寛ちゃんと比べてというのではなく、三年生の中でも大きい方で、男子を入れても後ろから数えた方が早いくらいだ。  足だって速いから、運動会のリレーではいつも選手に選ばれる。  かけっこでいつもビリの寛ちゃんとは大違いだ。    だからお姉ちゃんは、何だかんだ言っても寛ちゃんにとっては自慢のお姉ちゃんなのだ。
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