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あまりにも心配で心配で仕方がなかったので、これはもう誰かに話してしまわなければ寛ちゃんの身が保たない。
下校の時に上山くんにそれとなく
「なぁ、座敷童って知ってる? 」
と聞いてみたら
「あぁ、あの怖い奴やろ? 」
とあっけらかんと言われたので、何だか複雑な気持ちになって、それ以上は話さなかった。
家に帰ってランドセルを置いて、お母ちゃんにおやつを出してもらった時にいよいよ決意して
「なぁ、お母ちゃん─ 」
座敷童がな─
と話してみた。
お母ちゃんは途中で割って入ったりする事無く、真剣に最後まで全部聞いてくれてから
「それやったら、絶対大丈夫やわ」
と簡潔明瞭に答えてくれた。
「………え、何で? 」
理由もなく大丈夫だと言われても俄かに納得できるものではない。
大丈夫なら大丈夫なりの理由を聞かせて貰わなければ困る。
「座敷童さんは、まだちゃんといてはるよ」
お母ちゃんはずっと笑顔だ。
「この前、寛ちゃんが寝てるときにお母ちゃんの足の裏もとんとんしてはったから、お話してん」
寛ちゃんはまだ半信半疑といった表情で聞いている。だってもう一年生なのだ。
「座敷童さんは、僕の事が嫌いになったん違うやろか? 」
笑顔のお母ちゃんが、今度は声を出して笑ってから
「その反対。座敷童さんは寛ちゃんの事が大好きなんやって! 」
完全に信用した訳ではないのだが、人から好きだと言われて嫌な気持ちになる人はいない。
寛ちゃんは凄く良い気持になった。
「だから、寛ちゃんが元気でいる限りは、座敷童さんはこの家にいてくれはるし、座敷童さんにずっといてもらいたいんやったら、寛ちゃんがずっと元気でおってくれたらええんよ」
お母ちゃんはまた、さっきまでの優しい笑顔に戻って、ゆっくりとした口調で寛ちゃんにそう言った。
ここまで言われれば寛ちゃんも、
──よし、これからは絶対にしんどくなったりせえへんぞ! ──
と決意する。
事実としてまるっと受け止める事ができたのだ。
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