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その日も、それからも、もう足の裏を誰も
─トントン─
する事はなかったのだけれど、寛ちゃんは怖くて怖くて暫く眠れない夜を過ごした。
頭から布団を被ってお母ちゃんが戻ってくるのを待って、お母ちゃんにくっついて眠るのだ。
座敷童によって困ったことになったのは、実は寛ちゃん一人だけではない。
小学校一年生になって、それなりの自覚もあったから、寛ちゃんは努めて夜にも一人でトイレに行くことに決めていたのだが、それからと言うもの、夜に一人でトイレに行けなくなってしまった。
なるべく寝る前にお茶を飲むのを控えたりしてみるものの、眠れない時間が長くなるとトイレに行きたくなってしまう。
そして、その度にお姉ちゃんを起こすのだが、お姉ちゃんは、半分寝ぼけてはいるけれど
「ほんまにしゃあない子ぉやなぁ」
と言いながらも、嫌な顔をする事なく、必ず起きて付いてきてくれる。
やっぱりお姉ちゃんは、寛ちゃんの自慢のお姉ちゃんなのだ。
お姉ちゃんにお姉ちゃんはいないのだから、寛ちゃんはちょっと得したなあと思って、ゴロンと横を向いてお姉ちゃんの方をぼんやり見ていたら、何だか安心して、その内に自然と眠くなってくるのだった。
【足裏の妖精 ─ 完】
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