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Ⅲ.不可思議な発見(2023.10.12)
どう反応すべきだろうか……。
迷っていると、ミサからの追撃が来た。
『そろそろ家でなきゃ。エイシン、今日も頑張ろうね』
エイシン……俺の名だ。
つまるところ送り間違いではないということだ。
ホッとしたような、また別の怖さがあるような、複雑な気持ちだった。
『いってらっしゃい。ミサもがんばって』
ひとまずミサの雰囲気に合わせて当たり障りなく返した。
すぐにウサギが親指を立ててウインクしているスタンプが返ってきた。至って普通の……いやむしろ雰囲気が良い時のやり取りである。まるで、昨日のデートが万事うまくいったかのようだ。俺が昨日、そうしたかったようになっている。
それはいいのだが、結果として俺は昨日デートすら出来ていないはずだ。ミサにすっぽかされてお灸を据えられたのだ。
これはあれか、あえて「理想のやりとり」みたいなのを演じて、俺に嫌がらせをしているということなのだろうか。
……にしては自然すぎる。
そもそもミサは怒ったときにこんな回りくどい表現方法を用いないだろう。むしろ昨日の「すっぽかす」という分かりやすく短絡的な拒絶方法を用いるのがミサらしさだと思う。
俺は会社の準備もせず、手帳を手に取った。
今一度、昨日の日記を追いかけてみようと思った。実際、酔っていたし、何を書いたかも良く覚えていない。記憶には無いが、もしかしたらミサと電話したりして和解したのかも知れない。
昨日の日記を開く。
そこで俺は、不可思議なものを発見するのだ。
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