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あの教室の中では黒板の緑色さえ、美しく見えた—
「ねえ、明依」
「何?」
「あの、」
急にどうしたのだろう。
映里ちゃんがわざわざ私に向き合って言う事なんて、あっただろうか。
目の前の映里ちゃんは酷く黒い瞳を輝かせながら、どこか神妙な表情をしている。
「絶対に秘密だからね、私達のこと」
「え、うん」
2人の間に、少しの空白が生まれる。
「 」
え?
正直に白状すると、私は映里が何のことを言っているのか理解できなかった。
頭の片隅に微かに残る、どろどろとした記憶。
でもそれは、誰かによって靄がかけられたように思い出せない。
私は考えることをやめていた。
少し気がかりではあるが、まぁ仕方ないか。
「大丈夫だよ映里ちゃん!私達友達でしょう?」
「うん、よかった。ありがとね、明依。私達、一生最高の友達でいようね!」
私は頷く。
私が知らない間に、映里ちゃんの身に何かあったのだろうか。
もしかして、他の人に何かされたとか。
「安心して、映里ちゃん。私達はきっと中学生になっても高校生になっても、大人になったって一生友達だよ」
途端。映里ちゃんの周りに漂う、どこか沈んだような雰囲気が晴れる。
嬉しくてたまらない、というような笑みを浮かべた。
「ありがとう!私明依のこと大好き!」
私は笑い返す。なんだかとっても満たされたような気持ち。
映里ちゃんは私の頬を優しく撫で、そして口を開いた。
「私達のこと、秘密だって言ったからね。絶対、だよ」
昼休みの喧騒、その中で確かに、静かに佇んで。
教室の隅で見つめ合う、2人の影が在った。
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