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家に帰ると、テストの疲れがどっと押し寄せてきて倒れそうになった。 ベットにダイブしてごろごろしていると、嫌なことに気付いてしまった。 あっ、まずい。 明日は美術の課題の提出日だ。 自分の分は終わってるからいいけど、映里と美結のもやらないといけないんだった。 あーあ、一週間がはやいなぁ。 「んっ」 どうにか起き上がって、画用紙を引っ張り出してくる。 「えっと、映里のは全体的に寒色系だから、藍色をベースに色を混ぜていけばいいかなぁ…」 私が6歳の時に病気で亡くなった祖母は、まあまあ有名な画家だったらしい。 祖母の父も画家だったから、家には沢山の顔料やなんかが溢れている。 もう使わないような古びたものまで残してあるから、においが凄くて嫌なんだけど、絵の具を買う手間は省ける。 実は、親戚の人たちの中で祖母の死は自殺だったんじゃないか、なんて話が出ているらしい。 病状と年齢を考えると、亡くなったのがあまりにはやかったから。 まぁ、そんなこと今の私には関係ないけど。 画材が並ぶ部屋に行くと、油のにおいが鼻をついて気持ちが悪くなる。 湿る前髪を触り、暗い部屋の中を彷徨う。 よく分からない名前をした謎の顔料たちが並ぶ中、一つのものに目が留まった。 埃を被っていても分かる、血のような何かと指紋。 大きめの瓶に入ったそれに、今までにない薄気味悪さを感じた。 バリン。 何かが落ちる音がした。 『振り向けない』 自分の中に在る何かが、すくっと起き上がった感覚がした。 ぞわぞわとする何かを背中に感じつつ、背中を向けてドアへ急ぐ。 その瓶を握りしめ、怖ず怖ずと部屋を後にした。
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