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ガッガッガッガッガッガッガッガッガッ。
「ねーえ、映里ちゃん。なんでそんなこと、するの?」
「決まってるじゃない、明依が私の友達じゃ、なくなったから」
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッ。
「私の友達じゃない?なんで?」
「は?そんなことも分からないの?心当たりない?」
「えっ」
ああそうか、と思う。
こんなことで、映里ちゃんはまた怒ったのか。
私が映里ちゃんの、嫌いな友達を庇っから。
映里がこよみちゃんの本を破ったから、新しいのをあげただけなのにな。
友達がしたことを、代わりに謝ろうと思ったのにだけなのにな。
「ねぇ、映里ちゃん」
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッ。
「この前まで仲良しだったでしょう?」
バンッ。
地鳴りのような音が響く。
気付いた時には、頭が地面に叩きつけられていた。
いつも来ない公園に呼んだと思ったら、そういうことか。
鈍い音がした後、激痛が全身に走る。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッ。
「息が、息が…、がっ、でき、ない」
痛い、なんてもう、思わなかった。
骨が軋み、身体を縛り付けられ、何も感じない。
土のにおいに口が塞がれて、喋ることもできない。
手足は固まったまま動かず、脳も言うことをきかない。
「ごめんねぇ」
バサッ。
目の前が真っ暗になり、もうどうすることもできなかった。
最期、映里ちゃんの顔が見えた。
この世の全てを支配したような、醜くて美しい笑顔。
私と一生友達だって言った時にはそんな顔、しなかったのに。
映里ちゃんの笑った顔、私、大好きだったのに。
『め、い。めい。め…、い。』
誰かが呼んでいる。
私のことを。
脳裏に、畳みかけるような声が聞こえて止まない。
幻聴じゃない、誰かが私を呼んでいる。
『めい、ま……せて。わ………が、ふ…、しゅ……、して………げる、から………、だ………ら、まって、て………』
視界が歪み、身体が何処かへ落ちていく。
暗闇から暗闇に流されるような、不思議な感覚がした。
土に埋められたのに、叩かれたのに、何故だか痛さは感じなかった。
意識は、そこで遠のいた。
バリン。
目を開けると、暗い部屋にいた。
油のにおいが漂う中、息を吸い込む。
「ゲホッ。」
血を吐き出すと、胸の痞えが取れたような感じがした。
その矢先、止めどなく溢れるものを見て、息が止まる。
「え、」
そこには緑色の、綺麗な液体が広がっていた。
ふと前を見る。
私はキャンバスに向かって、何かを描いていたようだった。
緑色の、何かを使って。
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