第1章 お化け屋敷

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謎の和風な家の前に佇む使い魔。 「そろそろ解いてもいいかもですね」 「じゃ、解きましょかー」 「開けまーす」 かちゃん。 澄豆が瓶の蓋を開けると同時に「ぱ」と姿をみせるおれ達。 「ぐっほっ」 いきなり重力がかかったので、背中から地面に激突する…わけではないけどびびった。 「うわ。って、え?何これ瞬間移動したようにしか感じなかったんやけど」 真羽ちゃん!そうだよね!瞬間移動したよねこれ! っていうかそれよりもさ。 「なんか消された感覚はあったけど、普通こういう登場シーンて煙出るもんじゃない?」 自分で言っておきながらだけど、全然関係ないね。うん。 おれの思考に被せるように、南那ちゃんがため息をつく。 「でも、今日一日ずっと奇想天外すぎるからもう慣れた気もする」 3人揃って、地面に投げ出された格好で頷き合う。 「そうなんです!この瓶、黒霊消師の使い魔だけが使えるんです!」 「普通の幽霊を封印して!その封印している時の記憶も全て消えて!」 「瞬間移動したように感じさせることができる、貴重な瓶なんです!」 なぜか得意げな使い魔3匹。 「うん、だから何の使うのそれ」 「そしてなんでそんな得意気」 「どこがいいのかさっぱりやな」 ジト目で使い魔を見るおれ達。 テッテレー、とポーズをとっていた使い魔は、ポーズを解き。 「関西人てツッコミが鋭い…」 「結構グサッときますね…」 「そして目までが座ってる…」 大阪人に対して大変失礼なことを真顔でサラリと吐いた。 「「「は?」」」 そしてその失礼な言葉にブチギレる関西人。 「大阪の人をバカにしてんな!!」 悲鳴に近い声で叫んでやる。 「さっきのはお前らのやってることがアホすぎてその感想言っただけやねん!」 南那ちゃん、その通りです!! 「グサッとくるんやったらその態度を改めな!」 まさにそれ!!真羽ちゃん!よくぞ言ってくれた!! 次は3匹がジト目で見る番。 「「「…」」」 「「「何ですかその目!!!!」」」 使い魔達の目に、身をひく。 はたと笑顔に戻った使い魔達が、話し始めた。 「この家には、とてつもなく探すのが大変な隠し扉があります」 「その隠し扉は使い魔、および本部長しか知りませんが」 「あなたたちは特別に、その場所をお教えします。秘密の場なので用心願います」 話終わると、着いてきてください、と響奏が言った。 それぞれ頷くと、使い魔達の後をついていった。 ギィーーーー、バッタン、ガコン。 すごい音を立てた、古びたドアをくぐる3匹とおれ達。 「あ、この家、土足のままでお願いします。っていうか靴脱げないでしょうですし」 忠告するモンブラン。 「古い家なん?ここ。」 何気なくおれが聞くと、響奏が答えた。 「ここは、今からあなたたちに与えられることを始めた方、黒霊消師の初代が使っていた隠れ家的なものです」 意外と奥深い話に、再度聞いた。 「さっきから何回か言ってるそれ。こくれい…しょうし?って、何?」 「まぁそれは…複数の隠し扉の先で、お話があると思います」 小さな手を口の前に当ててにっこり笑った響奏。 …秘密ばっかりじゃん。全然話が見えてこない。 考え込むおれの横を通り過ぎた響奏は、廊下の突き当たりにある壁を押した。 すると、壁が奥にずれ、扉が出てきた。 「え…」「ウソ…」「ズレた…」 3人揃って、戸惑う、というか引いてる。 おれは真羽ちゃんの腕にしがみついている。 澄豆が扉を手で示した。 「この扉に入ってください」 もうついていくしかないということで、3人で恐る恐る戸をくぐった。 後から響奏、澄豆、モンブランと続く。 ドアの先は、一本道しかない廊下だった。ランプもないのに昼間の外のように明るい。 「なななななんでこんなに明るいんだよ…」 「「そうだよね。不気味…」」 震えながら指摘するおれ。それに同意の真羽ちゃんと南那ちゃん。 おれが震えてる理由は聞かないでほしい。 最後のモンブランが、ドアの内側についているボタンを押すと、下がっていた壁が元に戻った。 「「「は……」」」 2人は口を開けたまま固まっている。おれは頭が痛い。 …何何何!?怖いこっわ!!何この古い家に似合わない現代風の機械は。本物のお化け屋敷だァァッ… 恐ろしくてしょうがないしか考えられない。 自分がいて成り立つお化け屋敷なのは一応理解してるつもりだ。 そんな事に構わず、モンブランはドアを閉め、どこからか出した鍵をガチャンと閉めると、先頭に立った。 「こんな仕掛けがあと、2個ありますので。以後お見知り置きを」 歩き出しながら背を向けて言うモンブランが。 「えっ。無理。声上げる」 南那ちゃんと真羽ちゃんの腕を一本ずつ掴んで首を振る。 「頑張ってね!」 掴まっている一方の南那ちゃんが、にっこり笑って傍のおれに笑いかけてくる。 「その顔が今は怖いんですよ…」 顔面蒼白な顔で南那ちゃんを睨む。 後ちょっとで死ぬんじゃないかこの人、と、真羽ちゃんがボソッと呟いたのが、やけにはっきり聞こえた。 「怖いこと言わないのッ!」 南那ちゃんを睨んでいたが、グリンと振り返って今度は真羽ちゃんを睨む。 「そんな顔で言われたらこっちまで倒れそう…」 「真顔で言わないで!!本当に倒れる気がしてきた…おえっ」 もう既に吐きそうになっているのは突っ込まないでほしい。 何が怖いのかさっぱりわからん…、ていう声が2つ聞こえた気がした。 眉間に皺を寄せてすごい目でおれをみる南那ちゃんと真羽ちゃん。 あーー!もう!しょうがないから説明する! 「何が怖いのかさっぱりわかりませんよね!ごめんなさいねッ!おれはお化け屋敷が大の苦手なんですよッ、わかります?何せ暗所恐怖症なんですよ!!ここお化け屋敷と雰囲気が似てるのでェッ!」 逆ギレに似た喋り方をしてしまった。 使い魔達は、また始まったなんだコイツ、的な顔で先頭を並んで歩いている。 何気にひどい。 それについていきながら真羽ちゃんと南那ちゃんは困った顔でおれの話を聞いてくれている。 「あとおれ暗所恐怖症以外に、古い建物が苦手なの!お化け出そうだし、ささくれとか不気味じゃん!他にも過去の出来事でトラウマでもあるし!最初の方は顔に出ないように頑張ったけどもう無理!」 いやだ本当怖いどこまで続くのこの廊下、震えながら進む。 過去のトラウマはなんだったか忘れたけど!! 「あーなるほどね。そりゃぁ怖いわ。トラウマね。回避できないもんね」 顎に手を当てて同情する南那ちゃん。 わかってくれた…。ちょっと安心。 自分の真横にある廊下の壁を眺めながら話を聞いていた真羽ちゃんは、 「トラウマはしょ、」 とそこまで言って、言葉を、足を、止める。 ひぇぇぇっ、と小さな悲鳴をずっと上げてるおれの奥から、ひょこっと真羽ちゃんの顔を覗き込む南那ちゃん。 真羽ちゃんの異変に流石のおれも気づいて、悲鳴をどうにか飲み込む。 そしてどうにか声を絞り出す。 「どっ、どうしたっ?真羽ちゃ、」 「ぎゃぁぁぁ!!!!なんかでかい!蜘蛛ッ!が!いるッ!キッッッモ!駆除ッ!さよなら!!!」 真羽ちゃんがいきなり悲鳴を上げ始めた。 「あーもう。真羽ちゃんまでバクってしもた…どうしよう…」 今にも頭を抱えそうなくらい呆れている南那ちゃん。 「はぁ………?」 怖さも吹っ飛んで口を開けた間抜け顔で真羽ちゃんを見るおれ。 ごめん。真羽ちゃんがそこまで悲鳴をあげるとは思ってなかった。ノーコメントで。はい。 その時、口を挟まなかった使い魔達がぴたりと止まった。 どした? おれの疑問に答えず、バッと振り向いて一瞬で真羽ちゃんの足元までくる。 「蜘蛛はやばいですねぇ!」 「どこですか!」 「準備はできてます!」 …え?えー?なんの準備ですか?っていうかなんで家にでっけぇ蜘蛛がいるんですか? おれをそっちのけで、物事は進む。 虫嫌いな真羽ちゃんは、しゃがんだまま指示す。 「そこ…」 「あそこですね!」 「います!響奏ぁ!ここ!」 「了解ですっ!」 叫ぶように返事した響奏が、高く飛んで、くるりと宙返りし、手に持った針を蜘蛛に突き立てる。 ズブシャァーーッ! 普通の蜘蛛とは思えないほど大きな音が出た。 「ふう。タイミングもバッチリです」 「もっと大きくなるとこでした」 「教えてくれてありがとです」 そして、何事もなかったように、では、と壁を押そうとする。 「ちょ!待ってこれどういうこと!?」 「そろそろ説明してもらわないと困るんだけど!」 食ってかかる南那ちゃんと、復活した真羽ちゃんを視界の端に入れながらおれは呟く。 「古い家恐怖症が治った…!」 今まで南那ちゃんの前を歩いていた澄豆がいきなりキレ気味で捲し立てる。 「だから本部に着くまで言えないって言ってるじゃないですか!!」 いきなり怒鳴られた真羽ちゃんと南那ちゃんは、おぉ…と身を引き、瞬きをする。 おれまで身をひいてしまった。 「とにかく!着くまでは言えないんです!!だから何も聞かないでくださいねッ!!」 澄豆がいい終わると同時に、じゃぁ押しまーす、と響奏は、目の前の壁を押した。 ガッコン。 その壁は一部だけ奥に沈み込み、響奏の足元がガコンと2つに割れる。 割れたところから響奏は、下に落ちていった。 「「「えーーー!ウソぉ!罠!?」」」 おれ達は全く同じリアクションで叫んだ。 そして元からキレ気味だった澄豆が叫び返してきた。 「だからおんなじような仕掛けが後2個あるって言っただろぉ!」 「うわーーー!敬語抜けた!怖ーーーー!」 おおさげにおれは叫ぶ。 「葵ちゃん、ずっと敬語で喋る人はそんな居いひんと思うで」 いつのまにか真羽ちゃんがおれの肩に手を置いていた。 「それもそっか」 そりゃぁそうだろ、心の端で自分につっこむ。 「じゃぁ、最初に、狐空葵さん、落ちてください。下に響奏がいるので」 今まで黙ってやり取りを聞いていたモンブランが言う。 「は!?おれ!?」 まさかおれまで落ちるなんて思ってなかった。 恐る恐る穴を覗き込む。 そして振り返ると、悲鳴に近い声で叫んだ。 というか、叫ばざるを得なかった。 「大丈夫なのここ!?下が真っ暗で見えないんだけど大丈夫!?」 おれの悲鳴とは裏腹、落ち着いた口調(機械音だけど)で頷くモンブラン。 「はい大丈夫ですので。さっさと落ちてください」 「大丈夫!?ホントに!?落ちてから『不意打ちでした、さよーならー』とかやめてね!?」 「大丈夫です。もうあなた現世にいないので」 「うえっ。なんかサラッとしてるなぁ。いないとか怖!この感覚はおれがおかしいのかな」 あれれ、と頭をコツコツと叩く。 時間稼ぎをして気持ちを落ち着かせようとする。 だけど、そんな作戦を組んでくれるはずもなく。 キレてる澄豆が叫んだ。 「もういいからいい加減落ちろや!!」 「はいぃぃ!すいません!!落ちます!どぉりゃ!」 明るい光が消えて、真っ暗な闇の中を落ちる。 落ちていて、風切り音が聞こえるのに、どこか暖かい。 数秒後、暗闇がパッと晴れて、おれは明るい空間に出た。 地面が近づいてくる。これは今日の朝と似ている。 あーあ。2度目の自殺? そんなことを考えていた。 「あぁ、葵さん、1番だったんですね」 「は?」 いや…え? おれは、気づくと床に着地していた。背中から。 「そこ、早くどかないと、上から落ちてきますよ、次の方」 さっきから聞こえる、敬語でどこか温かく感じる機械音は、響奏だった。 「あ…うん」 言われるがままに落ちて言われるがままに離れる。 しかもここ、さっきの廊下と変わらないし。 いや、落ちた感覚がなかったんだが。朝の自殺よりも。 どういうことだ?変化はないはずなのに。幽霊って言われて変わってないのに。 ハテナばかりを繰り出す頭に嫌気が刺した。 もー、どうでもいいわ。 「ほらほら、聞こえますよ、上の声が。こっちの声は向こうに聞こえないけど」 「え?」 響奏に言われて耳を澄ます。 一時の静寂。 「無事、落ちましたね」 この機械音。微妙に響奏とは違う、透き通った機械音は、モンブランのもの。 「無事…なんかな」 「無事…なんやろ」 神妙な顔で冷や汗かきながら頷き合う真羽ちゃんと南那ちゃんがおれには想像できる。 「じゃぁ次は地柴南那さん。どうぞー。響奏と葵さんが下で待ってると思います」 おれの時と同じだ。 南那ちゃんが次,降ってくるのか。 朝、おれが降ってくる時に2人が感じたことが体験できる。 いいことではないけど。 「うえぇぇぇぇっ。わ、わかりました。じゃぁいいいい行きます!えいや!」 南那ちゃん、怖いのを我慢して落ちてるな。 「続いて澄豆行きまーす。とう!」 あれ、澄豆ってどこで機嫌なおしたんだ? 「うわぁぁあ!!!」 「黙ってくださいッ!!」 南那ちゃんの悲鳴に澄豆のどこか子供っぽい機械音。 南那ちゃんが、尻餅をついた格好で着地する。 音さえも聞こえなかった。 「…痛くないんだけど、はぁ。なんで!?」 ごめん、おれもわからん。だけど、 「上から声が聞こえるよ」 「あれ、葵ちゃん。そうなんだ」 …… 空間が沈黙に包まれる。 すると声が聞こえた。 「はいじゃー、水鳥真羽さんよろしくでーす」 どこか楽しそうに聞こえるモンブランの声。 「り、了解です。全然オッケーじゃないけどっ!もうどうでもいいわ!!そりゃぁっ!」 真羽ちゃんが勢いで落ちているのが脳裏に浮かぶ。 モンブランの声は聞こえない。 ガガガガガ いかにも機械が動いてますという音が聞こえた。 「「え?壊れた?」」 南那ちゃんと揃って使い魔を振り返る。 「「いえ、穴の仕掛けを元通りにしてるだけっす」」 響奏と澄豆の声が重なる。 「そっか」 南那ちゃんは納得したみたい。 「うっっっわあああああ!」 悲鳴をあげる真羽ちゃんが見える。 モンブランがその真横で一緒に落ちている。 真羽ちゃんが南那ちゃんと同じように着地する。 「えぇ?」 そういう反応が正解だよね、うん。 「やっぱりみんな無事ですね!」 ニコニコするモンブラン。機械音が無事を確認する。 みんなが、はい大丈夫です、と声を揃えた。 「じゃぁ次行きましょー!」 澄豆が言って、先頭を歩く。 いや、切り替え早くない? おれは、澄豆についていきながら聞く。 「いや…澄豆さぁ、さっきの機嫌はどこいった。真羽ちゃん知ってる?」 「なんかね…南那ちゃんが落ちた後、『行きまーす』ってコロッと機嫌直した」 「あ、そうなんだ」 あそこでか。 「どこでスイッチ変わったんやろ」 「どこでしょーねぇ…」 そんなことを話していると、使い魔達が立ち止まった。 気づけば、一般の教室1つが丸々入るくらいの空間に出ていた。 「ここが3個目の隠し扉です」 モンブランが振り返りながら言う。 「え?どこ?また仕掛け?」 辺りを見回しながら問う南那ちゃん。 「いえ、ここで、黒霊消師に相応しいか判別されます」 響奏が訂正。 ……え?黒霊消師…に、相応しい…? 続いて澄豆が説明する。 「そこにある板、ひとつだけ色が違うじゃないですか。あそこに使い魔を持って立つんです。立って、相応しいと判断されると、その2個前のタイルに、黒霊消師の証となる、ネックレスが落下してきます。そのネックレスを手に入れると、黒霊消師の仲間入りです」 ふーん。ネックレスが象徴か。 響奏が言葉を繋ぐ。 「ですが、相応しくないと判断された場合、一気に外まで弾かれます。そして、この屋敷の記憶はゼロになります」 あれ、それは嫌だな。 モンブランが言葉を繋いで隠し扉の有りかを明かす。 「黒霊消師の証のネックレスを、この廊下の突き当たりにある台の窪みに当てると、先ほどのように足元が開きます。つまり、ここまで辿り着けても、外部者はここで弾かれるということです」 あーなるほど。防犯はガッチガチってわけね。 話は終わったようなので、おれは頷いてみせた。 「なるほどー。なんとなくわかったような」 2人も同じように頷いている。 「とにかく使い魔と立てばいいんだよね」 「弾かれた場合は、幽霊だから成仏かな」 南那ちゃんが顎に手を当てて、成仏ねぇ…と目を細める。 響悪いよね。 南那ちゃんの言葉に、響奏が同意した。 「そうですね、成仏ですね。御臨終…」 「「「一言多い」」」 揃って突っ込んだおれ達。 ニコニコと澄豆が割って入った。 「じゃぁ、誰からやりますか?」 「「「……」」」 顔を見合わせて黙る。 そうなりますよねー、と声を上げたモンブラン。 「さっきは適当だったので、今回はじゃぁ…誕生日早い順で」 なんで誕生日?問題はないけど。 南那ちゃんが小さく手をあげる。 「じゃぁウチか。6月生まれ」 それを真似て、おれは、はいはーい、と前に出る。 「そうだね!おれは10月生まれ」 「私は2月生まれだから最後かな」 順番はあっけなく決まった。 「じゃぁ地柴南那さん、タイルの上に澄豆と一緒に乗ってください」 モンブランが指示する。 「はーい。澄豆ー」 「はぁい」 「じゃぁ立ちまーす」 澄豆を頭の上に乗せた南那ちゃんがタイルの上に立つ。 緊張するはずなのに、笑顔だ。硬い笑顔だけど。顔、ちょっと怖い。 2秒後、パァン!と言う掌を打ち合わせたような音が響いた。 すると、南那ちゃんの斜め前の頭上からネックレスが降ってきた。 コッツーン 硬いものが床に落ちる音が響く。 うわー。ヤバい。緊張してきた。次おれだよね。 口を開けたまま固まる南那ちゃん。 そして澄豆は、南那ちゃんの頭の上から声を上げた。 「やりましたね!南那さん!ネックレスは南那さんのものです!仲間入りですね!!」 そんな声にハッと我に帰る南那ちゃん。 「とっていいんだよね?」 もちろん。 揃って頷く。 「「いいよー」」「「「いいですよー」」」 ネックレスを手に取る南那ちゃん。 「なんか思ってたより重い…そして…中に入ってるのは誕生石?」 おお!と声を上げたモンブラン。 「よく分かりましたね!誕生石です!」 えぇ!?誕生石が入ってるのって、すご!! 「じゃぁ次は狐空葵さん!」 その声で、緊張が襲ってくる。 頷いて、歩いていく。肩に飛び乗ってくる響奏。 幽霊なのに体温が感じられる。同類だからかな。少し緊張が和らいだ。 タイルに乗った、と思った時には、もうあの音が響いて、頭上からネックレスが落ちてきていた。 コッツーン さっきと同じ音が響いた。 あれ、なんか早くない? 「判断が早すぎる…」 響奏があっけにとられたように口を開けてネックレスを眺めていた。 「バグったんかな?」 頭上を見ながらちょっと焦る。 「いや…それだけ適任って事ですけど…あまりにも早い気がして…まぁ、いい意味なんですけどね!」 響奏が驚きを隠せないまま笑ってくれる。 「そっかぁ」 そう言いながらネックレスを手に取る。 「重っっ!?」 重い。というかこれずっとつけてたら肩こりそう。 「でしょー」 おれの声に同意する南那ちゃん。 おれがネックレスを手に取ったことを確認して、モンブランが言う。 「じゃぁ最後、真羽さんいきましょうか!」 「わかったよー」 モンブランを手に乗せてタイルに向かう真羽ちゃん。 南那ちゃんと同じように、2秒後にあの音が響いて、頭上からネックレスが落下する。 落ちてきたネックレスを手に取って呟く真羽ちゃん。 「なんか、ネックレスの中、不思議な感じ」 そう。ふわふわと誕生石が浮いているのだ。 それに加えて、水がやけに透き通って見える。 「「そだねー」」 おれと南那ちゃんは、声をそろえる。 「って事で、全員合格!です!」 にっ、と笑って言う澄豆。 「じゃ、進みましょうか!」 「「「レッツゴー!」」」 本部長の部屋までもうすぐだ。 気合を入れるためにおれ達3人は掛け声を上げた。 「「ゴー!!」」 それに続いて、響奏とモンブランも小さな手を天に突き上げてくれた。 よーっし、やっるぞぉっ! 自分に、「何を」ってつっこんでから、おれは今日できたばかりの仲間に続いた。
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