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一番重要と言ってもいい情報だ。久土和がクラス内では一人の男としててではなく、人として好かれていたとしても、柔道界ではまた違った印象かもしれない。
彼の強くてかっこいい姿を見てファンが集まっている可能性もあるのだ。ライバルがいるなら把握しておかなければならないと、元音は気を引き締めながら問い掛けていた。
「えっ久土和君が? ははーん、さては……」
「大好きなんです、わたし久土和くんともっと仲良くなりたくてっライバルがいるなら知っておきたいんです」
元音の包み隠さない様子に斉藤は少し驚いた様子を見せ、それから「本気なんだねえ」とこちらの熱意を悟ってくれていた。
彼女の言葉に元音は大きく頷くと、斉藤の言葉を待つ。斉藤は顎に手を当てながらそうだねえと声を漏らしてそのまま言葉を続けてきた。
「久土和君が男の子としてモテてる感じはないかなあ……うちの部はさ、三年と二年にめっちゃイケメンがいるんだよ。だから大体集まる女の子はその二人目当てが多いかな」
そう言って斉藤は声を少し小さくしながらほらと言って、体育館の端側で準備運動を始めているとある生徒を指差した。
「あの子は二年の浦壁君。強くて顔もいいから大会でも結構ファンがいるのよ。鉄平さんと同じ学年だから知ってるかな?」
(良かった……)
元音は斉藤の言葉で心から安堵し、ほっと胸を撫で下ろす。今のところライバルの存在はいないと判断してもいいだろうともう一度安堵の息を漏らした。
「クラスは一緒になった事ないのでわたしも名前しか知らなかったです」
それから斉藤の問いかけにそう答えると、彼女はそうなんだねと口元を緩めながら相槌を返し、もう一人のイケメンの説明まで丁寧にし始めていた。
その内容に興味はなかったものの、そのまま元音が説明を受けていると、途中で久土和が体育館へとやってくる。元音はすぐさま目線を彼に移し、うっとりとした目で久土和を見つめた。
自身の体温が上昇していく感覚を味わいながら今日も好きだと改めて実感をする。本日何度目か分からない実感である。
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