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約十分後に久土和の姿を見つける。彼は改札前の端の方で元音を待ってくれていた。
通行人の邪魔にならないように端の方にいたのかと思うと彼への愛しさが増してくる。気の利く素敵な王子様……なんて美しい心の持ち主なのだろう。
「平ちゃん、引き返してくれたんだな! サンキュー!」
元音の姿を見つけた彼は、そう言って太陽のように笑う。元音は全然だと声を返すとすぐに彼と肩を並べて移動を始めた。
部活終わりの彼は、しかし疲れた様子を一切見せず楽しげに元音へ話しかけてくれる。久土和はいつも友好的に話をしてくれる王子様だ。
その姿勢が本当に素敵だと改めて感じてると『ピコンッ』というレインの通知音が聞こえてきた。これは元音ではなく久土和のスマホからのようだ。
「おっ平ちゃんちょい待ってな」
そう言って久土和は一度立ち止まり、スマホの通知を確認し始めた。元音も大丈夫だよ! と彼に告げると一緒に立ち止まり彼の反応を待つ。きっとタイミング的に部活の誰かから連絡が入ったというところだろう。
そんな事を予測した元音の予想はまさにその通りで、久土和は「ファミレス、ジナサンが混んでっからギストに変更したってよ。平日なのに人が多いんだな」と言って再び笑みを向けてくる。
彼が一緒にいるのならジナサンでもギストでもどちらでもいい。
久土和と同じ食卓で食事ができるのだと、考えただけで舞い上がりそうだ。
元音はそのまま久土和の眩しい顔を見返していると突如「あっいた〜!!!」という聞き慣れない女子の声がこちらに向けて放たれてきた。
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