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「久土和っ! こっちだよ〜」
「あ、その子が見学の子? よろしくー」
(誰っ!!?)
久土和の名を気安く呼んだ女子に視線を向けると、同じ制服を着た足の長い女子が二人そこにいた。
二人は親しげな様子でこちら側に手を振り、ファミレスの場所まで案内をしにきてくれた事を伝えてくる。
(久土和くん狙ってたりしないよね?)
楽しげに応対する久土和の背後で元音はそんな警戒をしていた。強張った体のまま目の前の女子達に視線を向けていると、二人は「私達は新体操部なんだ〜」と陽気に自己紹介をしてくれる。
制服のリボンを外しているストレートロングの女子は林と言い、タイツを着用したハーフアップの女子は紀井村と言うらしい。
二人共同じ学年であったが、クラスが離れている為面識がなかったのだ。元音も簡単な自己紹介を終えると、四人で目的地へ向かう事になっていた。
久土和との二人きりの時間が減った事に思うところはあったものの、それでも彼と同じ空間にいられる事が嬉しかった。そもそも彼が駅前まで迎えに来てくれていたこと自体が本当に嬉しかったのだ。その為元音は幸せな思いで足を進める事ができていた。
それにしてもファミレスでの会合は柔道部だけで行われるものと思い込んでいたが、それは元音の勘違いのようだ。
前提として部員でもない元音がこうして誘われてる事から、柔道部以外にも参加者がいることは想定できたはずなのだが、そこは全く予想できていなかったのである。
「柔道部とはねたまに一緒にファミレス行くんだよー」
紀井村はそう言って今回の会合が初めてではない事を説明してくる。どうやら柔道部と新体操部はよくこうして夕飯を食べに行ったりするようだ。
(えっじゃあ久土和くんも結構新体操の子と仲良いんだ)
久土和が誰とでも気軽に接せられる人だという事は熟知している。しかし、いい感じの女の子でもできたらと思うと元音はいてもたってもいられなかった。
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