13人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
そう思いながら久土和に置かれたカルボナーラを見つめる。元音は彼にありがとうとお礼を言いながらフォークを手に取り、早速食事を開始した。
久土和も表情を緩めながらうまそうだなと歓声を上げており、目の前でそんな光景が見られている事がこの上なく幸せで、元音は食事が喉を通るか心配になる程に気持ちが昂っていた。
「ねえ鉄平さんは今回初めての参加だよね? どういう経緯で来たの?」
そんな幸せの絶頂の中、久土和と向き合って食事を摂っていると、唐突に声を掛けられた。元音の真横に座っていた同級生の伊馬だ。
元音はちゅるりと口の中にパスタを入れ込むと、咀嚼をしてから口を開く。
「今日柔道部の見学に行ったら久土和くんが誘ってくれて」
そう答えると即座に久土和の方からも「そうそう!」と合いの手を入れてくれていた。
些細な事なのであろうが、このようなことがもうほんっとうに嬉しい。ただでさえ高揚感で飲み込みにくいパスタが更に飲み込みにくくなった。しかしこれは元音にとってご褒美のようなものだった。
「へえーそっか、久土和のね!」
納得したのか伊馬はそう答えると笑いながら「部活は何してるの?」と再び質問を向けてくる。元音は部活には所属していない。するつもりもなかった。
特にこれといった大きな理由はないが、あえて言うのなら宿題で居残りするのが恒例になっていたので放課後の時間を空けておきたかったという理由はある。
「そうなんだー柔道部の見学に行ったって言ってたけど、マネージャーになるつもりはないの?」
最初のコメントを投稿しよう!