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第十七話『重なり続ける親切心』
「じゃあまたね〜」
「お疲れー」
「またファミレス会しようぜ〜」
「明日も頑張ろうね」
「じゃーなー」
数十人の生徒達がそれぞれの帰宅路に着く中、元音はファミレスの前でなんと久土和と二人きりになっていた。久土和本人から一緒に帰ろうと声を掛けられたのだ。
今日は本当に不思議な事にご褒美と言える出来事が何回も起こり続けている。元音はこの瞬間に心から感謝しながら彼との時間に意識を集中させる。そう思った時だ。
「平ちゃん、これ貰ってくれ」
「えっ」
さあ駅まで歩こうと、声を掛けようとした瞬間、久土和は突然元音の目の前に千円札を差し出してきた。元音は驚き、彼の方へ顔をあげる。
「今日のファミレス代だ。俺が誘ったからな! 奢りって事で貰っておいてくれ」
久土和はそう言うと歯茎を見せて笑い、優しい王子様スマイルを披露してくる。
もうその笑顔だけで充分なのだが、彼の厚意を素直に受け取りたかった元音はありがとうと大きく声を出して久土和から一枚のお札を受け取る事にしていた。
(久土和くんが持っていた千円札っっ!!! ぬ、温もりが……きゃ〜〜〜っっ!!! ていうか奢ってもらっちゃった!! 王子様からのおごりっ!)
そんなテンションが絶賛心中で繰り広げられている元音は、しかし久土和にもう一度お礼を告げた。
「本当にありがとうっ! すごく楽しかったから、もっとお得になった気分だよ〜っ! くじが当たったみたいっ! ちょっと待ってね、お釣り出すから」
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