第十七話『重なり続ける親切心』

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* * *  最寄り駅に到着した勝旺(かつお)は、そのまま改札を出る。頭に浮かんでいたのは帰りの電車で一緒だった鉄平(てつひら)の事だった。  今日起こった彼女とのやり取りを経て勝旺は心から感心を示していた。鉄平の意志を持ったあの逞しい姿勢に。 (花みてえな子だな)  これは、勝旺の中で最大級の褒め言葉であった。  街中で美しくも綺麗に咲き上がる花々を勝旺は素敵な生き物だと感じている。そして、花は女の子にとてもよく似合う。だからこそ、勝旺の中で花みたいだという表現は、彼にとって最上級の褒め言葉になっていた。  それを知っている者は勝旺本人しかいないのだが、そのような話題をする事もないので誰かが知る由もないだろう。  久土和の中で、鉄平は大きな存在になっている。しかしそれは一人の女の子というものではなく、親しく話せる友人としての存在だ。  だが彼女が毎日のように自分を慕ってくれている姿を決して嫌だとは思わない。  これは都合の良い相手として接している訳ではなく、ただ彼女と話す時間が純粋に楽しいと感じるのだ。レインのやり取りも、全く苦には思わない。 「おっ平ちゃんからレインきてんな。すげえな、満月の写真よく撮れてんなー!!」  自宅に到着し、寝る支度を済ませていた勝旺はスマホを手に取り鉄平からのレインに目を通していた。  彼女からは帰り際に撮れたという満月の写真が送られてきており、綺麗に映し出されている月に勝旺は感嘆の声を出す。  そうしてそのまま眠くなるまで彼女とレインのやり取りを交わしながら、宿題の存在も忘れて楽しさに浸るのであった。 * * * 第十七話『重なり続ける親切心』終                next→第十八話
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