第十八話『見学二回目』

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第十八話『見学二回目』

 もうすぐ期末試験がある。  しかし元音(もとね)は夏休み前にもう一度だけ久土和(くどわ)の柔道姿を目にしたく、二度目の見学に行くことを決意していた。久土和には事前に確認済みであり、彼も嬉しそうに了承してくれていた。 「平ちゃん、すまん。今日は早めに部活行かなきゃならんくてな。悪いが先に行ってるな」  放課後になると久土和はそう言ってすぐに教室を飛び出していた。  顧問には彼の方から報告をしておいてくれるようで、元音は「全然大丈夫だよっ!」と言葉を返し彼の後ろ姿を愛おしげに見送っていた。 (トイレ行ってから見学に行こう)  そうして用を済ませてから前回のように部活動が行われている地下の体育館に向かうと、斉藤(さいとう)の姿が目に入り、彼女に挨拶をする。 「鉄平(てつひら)さんいらっしゃい! また来てくれたんだね〜嬉しいよ。ゆっくり見ていってね」 「ありがとうございますっ」  斉藤は快く歓迎してくれており、気さくに話しかけてくれていた。  だが今回見学の生徒は元音だけではなかったようで、体育館の邪魔にならない位置に二人の女子生徒の姿が見えていた。斉藤は元音がその事を指摘する前に律儀に説明をしてくれる。 「あの二人も見学だよ。時々二人セットで見学に来る子達なの」
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