第十八話『見学二回目』

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 クラスが違うため、名前を覚えきれていなかった元音(もとね)はそう思考しながらも「何?」と口を開く。すると渡辺(わたなべ)ではない方の女子が唐突にこんな事を尋ねてきたのだ。 「二階堂(にかいどう)先輩と浦壁(うらかべ)どっちなの?」 「へ?」 「どっち狙いなのよ」  どうやら二人は大きな勘違いをしているらしい。  元音が見学にきた理由が、この二人どちらかの狙いなのだと妙な確信を得て話し掛けてきているようだった。  元音は率直にどちらも狙っていない事を言葉にする。しかし信じてもらえていないのか、二人の警戒心丸出しな視線は弱まる事がなかった。 「絶対どっちかでしょ。そう言って抜け駆けする奴何度も見てきたんだから、逃げようたって無駄よ」  どうも過去に元音と同じような反応を見せた人物が何人もいるらしい。だがそうでもないものをそうですと言う事など普通はしないだろう。 「逃げてないよ、本当にその二人は狙ってないもん」 「その手は無駄だって言ってんでしょ」  そう言って女子二人は凄んだ様子でこちらを睨みつけてくる。 「見学に来る理由なんてそれしかないんだからね」 「さあどっち? ちゃんと白状して」  二人一斉に元音に向けてくる一方的な言葉に、元音は不愉快な感情を抱き始めていた。 「だから」  元音は目の前に立ちはだかる二人の女子をキッと見据えると、そのまま口を開いた。 「わたしは顔だけのイケメンとか興味ないからっっっ」
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