第十九話『転変と気付く乙女』

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 そう思いながら、彼はなぜこの時間まで学校にいたのかと久土和(くどわ)に問いかける。  テストの一週間前になると、全ての部活動は停止となり、生徒たちは全員試験勉強に励むよう予定を組まれている。  そのため部活がない筈の久土和が最終下校間近のこの時間まで残っているのは不思議だったのだ。彼もテスト勉強をしていたのだろうか。 「おう、今日は図書室で勉強してたぜ! 帰り際に教科書持って帰ろうと思っててな」  久土和はすぐにそう答えると、自身の席まで足を運び、机の中から数冊の教科書を取り出し始める。元音(もとね)はそうなんだねと言葉を返しながら、久土和が図書室で勉強をしていた事実を聞いて小さな後悔をしていた。 (わたしも図書室で勉強してたら、教え合えてたかもしれないのに……!!!)  しかし今更元音が嘆いたところで時間は巻き戻らない。小さな後悔をすぐに頭から追い出し、元音はもう一度久土和に話し掛ける。 「久土和くん、よかったら一緒に帰らない?」 「おう! そうしようぜ!」 (わ〜〜〜っっやった〜!!!)  二つ返事で即答してくれた久土和にもう何度目か分からない大きなときめきを抱きながら元音は心の中で踊り狂う。ありがとうと言いながら二人は教室を出て、共に学校を後にしていた。
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