第十九話『転変と気付く乙女』

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「修学旅行楽しみだよなー!」 「うん! 待ち遠しいよ〜っ」  駅まで向かう途中で久土和(くどわ)とそんな話をしながら足を進める。  久土和の隣に並びながらこうして会話を出来る関係になれている事が本当に幸せだ。 「京都っつうからにはよ、湯豆腐とかにしんそばとか食いてえな」  そう言ってその料理を想像しているのであろう彼の表情は、いつものように燦然と輝いていた。  そんな彼の横顔を下から眺める元音(もとね)は、久土和の嬉しそうな顔で更に喜びが増していた。 「どっちも美味しそう! わたしも京都で有名な食べ物食べたいなっ」 「だよな〜!」  そう言って楽しい話題は盛り上がりを見せる。久土和も修学旅行がとても楽しみである様子なのが分かり、楽しそうにしている彼は何だか見ていてとても可愛らしく思える。 「テスト頑張ろうねっ何か分からないところあったら教えられるし、遠慮なく言ってね!!」 「おう! サンキュ!! 平ちゃんに聞けるなら心強いな!」  彼と会話をすることは心の底から楽しいと感じられる。そのまま幸せな会話を続け、二人は駅のホームに移動していた。  久土和とは数駅だけ同じ電車に乗れるので、もう少し彼と一緒にいられるのだ。元音の高揚した気持ちはこの時までずっと継続している。
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