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「うん! ありがとうっ心配してくれるの嬉しいっっ。あんまり夜更かししないようにするね!」
元音は彼の優しさに応えたく、そう言葉を返すと久土和も太陽のように笑いながら「おう!」と口を開く。なんて最高のやり取りなのだろうか。
それから久土和と夏休みは何をするのかという話になり、元音はこの愉快なやり取りが明日の試験の原動力になると心底実感しながら話を続けていた。
(楽しすぎる〜〜〜ふふふ)
そんな事を思いながらも二人の間で話は盛り上がり、そして久土和らしい話の受け答えに元音が笑っていると、彼がこちらに目を合わせ視線が合った。彼の瞳を終始眺めていた元音は、唐突に目が通い合った事にドキンと胸が弾む。気恥ずかしく目線を逸らし、そのまま自身の乱れていない前髪を手で直し始めた。
久土和と目が合い気持ちが高まる――それ自体はいつもの事なのだが、いつもと違うのは、久土和の顔色がいつもより赤いことだ。逸らしてしまった目を戻した時、それを感じていた。
『間もなく〜『等駅』〜『等駅』〜お出口は左側です〜〜』
するとアナウンスが流れて数秒で久土和の乗り換え駅に電車が停車し、久土和はすぐに片手をあげて明日な! と明るく声を発して電車を降りていく。
そんな彼の後ろ姿を愛おしげに見つめながら元音も手を振っていた。そうして彼が完全に元音の視界から消えた後、元音は先程の久土和の表情を丁寧に思い返す。
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