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(さっき久土和くん…いつもより顔が赤くなってた……)
そう、元音と会話をしている最中一瞬だけ、彼は顔を赤らめたのだ。
あの時決して彼と距離感が物理的に近くなっていたという訳ではなく、一定の距離が二人の間にはあった。ならば、これはそういう事に違いない。
それを見逃さなかった元音は先程の久土和の仄かに赤らんだ表情が頭から離れず、彼と別れて話す相手がいなくなった今、冷静にその事を思い返していた。
(えっ今のってわたしの事少しは女の子として見てくれるようになったって事だよね!!!?!? どうしようしえちん可菜良〜〜〜っっ!!!)
久土和の顔が赤らんでいたのは見間違いなどではない。
勿論、彼がそれだけで元音を好きになってくれたとは思っていないが、それでも久土和から一度も異性として意識を向けられた記憶のなかった元音にとって今回の変化はとても大きな事で嬉しかった。
(前より距離が近づけてるって思ってもいいよね!!!)
そんな自問自答をして、元音は上機嫌のまま電車に揺られ続ける。
それから停車駅で一旦ホームに出た元音は、降車する者がいなくなったのを確認して電車に乗り込もうとするも、そこで初めてここが自身の最寄駅であることに気が付き慌ててホームに引き返すのであった。
駅を離れてからも嬉しさが消える事はなく、頭の中は完全にお花畑のままであったのは言うまでもない。
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