20人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
キラキラと光る丸い瞳。彼女の目は丸くて可愛らしく、眩しい瞳をしていた。
『それでな、合宿終わったら真夏のラーメンが最高なんだよな!』
『真夏のラーメンっ美味しそう! わたしも暑い日のラーメン大好きっ』
『暑いからこそいいよなっ! 平ちゃんも仲間だなー!』
そんなやり取りで盛り上がっていた鉄平との電車での時間、久土和は二人で楽しく談笑しながらその愉快さで気分が高揚していたのを思い出す。
彼女との会話はいつもながらに気分が良く、対話を重ねる毎にそれは強く感じていた。
花のように感じる彼女の姿も交流を続ける度に強まっている感覚がある。これもいつも通り喜ばしい事だ。
しかしいつもと違う事が一つだけあった。
笑い声を発し、本当に花のように笑顔でいる鉄平と目が合い、その後すぐ目を逸らした彼女が照れ隠しのように前髪を直し始めた姿を目の当たりにした時――久土和は自身の顔の熱が高まったのを確かに実感していたのだ。それはいつもとは違う感覚で、これまでにない体験であった。
(慣れねえ勉強したからなあ、今になってガタが来たんか)
熱を感じたのは勉強のしすぎだと、久土和はそう考えながら先程のやり取りを最高に楽しい時間だったと頭の中で記録する。
鉄平との会話がいつも通り面白かった事に嬉しさを抱きながら、しかし自身の本当の感情の変化に気づく事はなく、彼は自宅へと戻るのであった。
* * *
第十九話『転変と気付く乙女』終
next→第二十話
最初のコメントを投稿しよう!