第二十話『修学旅行』

1/5
前へ
/251ページ
次へ

第二十話『修学旅行』

 期末テストは無事に終わり、今日は答案返却日だ。元音(もとね)は数学の補習が確定してしまい、机に突っ伏していた。 (補習で学校とか嫌だなあ……久土和(くどわ)くんに会える訳でもないし)  と、そんな事を思っている最中、教室の端の方で久土和達の会話が耳に入ってくる。 「クドお前補習じゃん! モック奢りな!」  そう楽しそうに彼に告げるのは岩根(いわね)だ。久土和の友人らは、誰が一番多くの補習になったかでモックバーガーを賭けていたらしい。  元音はそんな会話を耳に入れ、久土和が補習であることを認知する。これは……運命か。  しかし久土和が補習を受けることになるかもしれないという事は事前に予測できたはずだ。  彼が学問を得意としていないのはクラス中が知っている事であり、そんなところも可愛い王子様だと元音はそう思っていた。だと言うのにその事に今の今まで気付けなかった自分に元音は不満を抱く。 (今回は結構いつもより勉強してたから……頭から抜けちゃってたんだ)  久土和との修学旅行をとにかく楽しみたいのだとそればかりに気がとられ、そういった事がすっぽり抜けてしまったのだろう。そう結論付け、今の嬉しい展開を喜ぶ事を優先させた。  補習とはいえ、久土和と会える時間があるのだ。夏休みなのに会えるだなんて、最高ではなかろうか。 (久土和くんと放課後デートできちゃったりしてっっ)  調子に乗ってそんな妄想を膨らませながら残りのテスト返却を受けるのだった。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加