第二十話『修学旅行』

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 いよいよ修学旅行の当日を迎える。  元音(もとね)はもはや武装とも言える完璧な荷物を肩にかけ、残りの鞄を手に持ち意気揚々と自宅を出ていた。今日は休みであった母に見送られながら元音の足は軽やかに駅へと向かっている。 (王子様と三泊四日〜っ王子様と三泊四日〜〜っきゃ〜〜〜っっ!!!)  一人妄想が歩き出し、電車の中でも元音のテンションは終始高かった。 「おはよ元音」  集合場所である学校前に到着すると、すでに来ていた美苗(しえ)に挨拶を向けられる。元音は彼女の姿を見つけた瞬間足を早め「しえちんおはよーっ」と全力の笑顔で駆け寄っていた。 「テンション高いなーまあそうよね、あんたにとってめっちゃ美味しいイベントだもんね」 「えへへ〜そうそう、よく分かってる〜」  そう言って美苗の意見を全面的に肯定すると、彼女は呆れた表情をちらつかせながらも「ま、二人きりになれそうなら抜けちゃっていいからね」と手助けとも取れる発言を繰り出してくれる。元音は感動しながら美苗に抱きついていた。 「しえちん大好きっありがとう〜っ! やった〜っ」 「おおっ何やら盛り上がっちゃって! なになに何の会話をしてたんだい〜?」  すると可菜良(かなら)がやってきてこちらに興味深そうな視線を向けてくる。三人でいつものような会話を繰り広げながら、元音は今日からのビッグイベントに強い期待を抱くのであった。
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