第二十話『修学旅行』

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 京都行きの新幹線に乗る直前から、もう元音(もとね)のパラダイスは始まっていた。  新幹線の席順も班ごとに席に座る事になっており、元音はなんと久土和(くどわ)と真正面に座る事が出来たのだ。心の中でガッツポーズをしながら、久土和との会話を楽しむ。 「せっかくだし対戦ゲームでもしようぜーソシャゲの」  乗車中、久土和と同じ班である岩根(いわね)雨宮(あめみや)はそう言ってスマホを取り出し、今オンラインで遊べるという対戦ゲームを提案してきていた。  久土和が乗り気だったので元音も一緒に参加する事にした。  ここに空名(くな)がいれば、彼女の圧勝になりそうだと思いながら、久土和と共にゲームを楽しめる展開に心から感謝し新幹線での時間は流れていった。  そうして数時間の移動でようやく京都駅に到着すると、早速昼食の時間となり駅前の大きなお店でみんな揃ってうどんを食べる。 (隣に久土和くんがいる〜〜最高っ)  元音は奇跡的に隣に座っている久土和が近い距離にいる事で胸のときめきが止まらなかった。ズズッと音を立てながらうどんを啜る久土和を横目でチラリと見つめながら、いつもとは違う京都という舞台で彼と修学旅行に来ている事を改めて実感する。  昼食が終わってからは本格的に観光が始まっていた。引率の教師達の指示で班ごとに固まって先導する教師の後に続いていく。  生徒達は皆、それぞれ談笑を続けて修学旅行を堪能している様子だ。  そして何を隠そう元音もその内の一人である。隣にはいないが、久土和が真後ろで岩根らと会話を続けている。楽しそうに言葉を発している久土和の声は、元音の気持ちを一層高揚させる要因となっていた。
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