第二十話『修学旅行』

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(肝試しは明後日の夜かあ〜楽しみすぎるよ〜っっ)  一日目の終わり、元音(もとね)はベッドの上で口元を緩めながらウキウキとした様子で寝転がっていた。先程までおしゃべりをしていた美苗(しえ)可菜良(かなら)はもう眠りについているのか、小さな寝息が聞こえる。  元音も早く寝ようと目を瞑るのだが、しかし興奮したせいで中々眠れそうになかった。 (久土和(くどわ)くん……今何してるかな。もう寝ちゃったかな)  テストの前日、久土和に夜更かしは健康に良くないと言われた事を思い出す。  彼に言われて以降、元音は一回も妄想に時間を費やして夜更かしをする事はなかった。久土和の意見はしっかり聞き入れて、改めたいからである。  布団の中に入ればつい妄想をしたくなる癖が依然として残ってはいるものの、すぐに頭を睡眠に切り替え眠りにつくように意識をしている。  そのため、今の今まで元音の睡眠時間は健康的な七時間睡眠を確保できるように改善されていた。  久土和のおかげで健康的な体に一歩近づけていると思うと、彼に管理されているような感覚に陥り、くすぐったい思いが芽生える。 (だめだめっ! 明日いくらでも考えればいいんだしっ寝よ!!)  一旦冷静さを思い出した元音は、小さく深呼吸をして、頭の中を空にしようと意識する。そうして久土和の愛おしい顔を思い浮かべているといつの間にか深い眠りにつくのであった。
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